<第百二十三章;凶星また一つ・・・>
≪一節;陥落(お)ちゆく城にて≫
〔堅固なる城門を破られ―――次々と制圧されていくハルナ城・・・
ですが、この城には七魔将の中でも屈指の猛将で知られる「三傑」の一人、フォルネウスと―――彼らの筆頭であるビューネイがいる限りは、
永劫としてこの城が陥落されることはないと思われたのです。
けれど・・・ふとしたきっかけから、不可能も可能になろうとは―――・・・
それはともかく、ハルナ城の各施設の制圧にあたっていた元・ヴェルノアの将の手によって、
余すところはフォルネウスが居座っている本丸を残すところとなりました。
そんな報告が次々と上がってくるに従い、段々と焦りと苛立ちを増すフォルネウスは―――・・・〕
魔:ご・・・ご報告申し上げます―――敵は、城のすぐ下の階層まで・・・
フ:ええい―――もう良い! 一々制圧されたのどうの―――気分が悪いわ!
ちぃ・・・腰抜けどもが。
まあよい、どの道この私がここに居座る限り、ここが陥落(お)ちることはない。
ルビカンテ―――ノエル―――! 至急私の親衛隊を、私の護衛に回らせ・・・お前たちはここへと来ようとする痴れ者を、下の階層にて迎え撃て!
〔いい加減に聞き飽きた―――配下の魔物兵による、この城が徐々に制圧されゆく報告・・・
そのことに辟易していたフォルネウスは、ついに麾下の副将を動かすことにしたのです。
けれども、それでは彼の警護レベルが大幅に引き下がってしまう―――それを知ったビューネイは・・・〕
ビ:必死―――な、ようだな・・・フォルネウス。
どうしても―――と、云うのなら、この私が手を貸してやらないこともないが・・・
フ:・・・余計な世話だ―――ビューネイ。
それに、お前の役目は終わったのではなかったのか、どうしてコキュートスまで戻らん。
ビ:うん? 今にも陥落(お)ちそうなこの城の現状を見て、「戻る」・・・とは―――
フフ・・・そのような薄情なことを私が出来るとでも?
フ:な・・・っ?! ふざけるな!この城は陥落(お)ちはせん!
この私が、こうしてここに居座る限りはな―――!!
ビ:おやおや・・・これはこれは―――いや、今のは不適切な表現だったようだ。
許してくれたまえ・・・
〔あたら仲間同士なので、仲間の窮地には応援に駆け付ける・・・
そのことは、彼らカルマに対して抗っている人間たちには常識のように思えるのですが、彼らはどこか違うようでした。
それが、同じ場所にいてフォルネウスの苦境を目にしているビューネイの云いまわし・・・
それにフォルネウスも、どこか彼を煙たがっているようだった―――
助けたいのか―――助けてもらいたくないのか―――
味方なのか―――味方ではないのか―――・・・
そう思いたくもなるようなやり取りが交わされたのです。
それに―――・・・〕
ビ:だが―――・・・ 一つ勘違いしてはならないのは、私が未だこの城に留まっているのは、主命において―――なのだよ・・・
フ:ナニ? 主命―――・・・と、すると、サウロン様からの? だとしたらどんな・・・
〔魔将の筆頭が、未だもってこの城に逗留する理由―――・・・
そのことはついには明らかにされることはありませんでしたが、
そのことを明確にフォルネウスに説明する義理は、最早ビューネイには存在していなかったのです。
そう・・・「元」仲間である彼には―――・・・〕