<第百二十四章;叛意ある者>
≪一節;魔将討死の真相―――其の一≫
〔七魔将の内でも、最も恐れられている「三傑」―――
その一角であるフォルネウスが、討たれる間際に云い棄てた言葉―――
それが、彼を討ったのはエルムなのではなく、逆にそのことがその場にいたリリアやマキ・・・さらには、ギャラハットやヒヅメ達に大きな衝撃を与えていました。
そう・・・その時フォルネウスは云ったのです。
現在彼が属する国家・組織の内に、明らか且つ確かなる叛意を持って、彼自身を死の淵に追いやった者がいる・・・と。
しかし―――そのことが逆に、エルムの内に引っ掛かるモノがあったらしく・・・〕
エ:・・・ちょいと、ギャラハットさんとやら―――
確か、こいつの他にもいたはず・・・だよねぇ、魔将が―――
ギ:それはもしやすると・・・ビューネイ殿のことでござるか。
いや・・・しかし―――あの御仁ならば、もうすでにこの城にはいないはず・・・
リ:―――え? ちょっと待って? ビューネイ“殿”・・・に、“あの御仁”・・・って―――
私たちが敵と認識している者に、どうして敬称なんか―――・・・
ヒ:あいつは・・・他の魔将たちとどこか違っていた―――
リ:ヒ・・・ヒヅメさん? あなたまで―――・・・
エ:ちょいとお待ち、リリアちゃん・・・
どうだろう、もう少し詳しく聞かせてもらえないものだろうかねぇ・・・その話を―――
〔エルムは―――過去にもある役職に就いていたことから、とあることには過激なほど敏感でした。
それが・・・他者の言動から、忠誠を誓うべき国家や組織に対しての、叛意の有無を探り出す―――「御史大夫」・・・
そこでつまり、フォルネウス末期(まつご)の言動と、この度降(くだ)ってきた養父子(おやこ)との、奇妙な一致に―――
現在自分たちがいる、ハルナ城玉座の間に辿り着く前に、ひと仕事を終えさせていた或る者に、疑いの目を寄せていたのです。
而して、その或る者こそ・・・七魔将筆頭―――ビューネイ=グリード=サルガタナス・・・
しかしここで疑問が浮かぶのに、永らくの間・・・カルマの屋台骨を支え、過去にはエルム達に辛酸を舐めさせていたのに、どうして―――・・・?
つまりは、過去にそう云う実績がある者に対し、俄かには信じられるはずもなく・・・
とは云っても、やるべきこと―――ハルナ陥落の証しである、パライソの国旗は翻ったのです。〕