≪二節;魔将討死の真相―――其の二≫
〔多くの疑問を残しながらも、旧クーナ王城ハルナは陥落しました。
その内でも一番に不可解だったのは、やはりフォルネウスの一件だったことでしょう。
では、エルム達がハルナ城玉座の間に辿り着くまで、なにがあったのか・・・
少しばかり時間を遡ってみると―――・・・〕
フ:うぐぁあ~っ?! お・・・っ、おのれ―――どういうつもりなのだ・・・ビューネイ!!
ビ:ほほう―――これはこれは・・・思いのほかしぶとかったようだな、フォルネウス。
〔突如として―――何者かに貫かれたフォルネウスの身体・・・
しかも、貫いたのは、剣や槍などではなく・・・
ある者の腕(かいな)―――
その名も、「安楽死」と呼ばれる―――『サイネジア』の持ち主こそは・・・
フォルネウスと同志であるはずの、ビューネイだったのです。
しかし―――あたら同志であるはずの、思いもよらない行為に、しばし戸惑うのです。
けれども・・・元々の彼らは、それぞれの意志をもって行動していたため、滅多と協力し合わないのが常だったのです。
ところが―――・・・その時フォルネウスが感じていたのは、ビューネイはこの城の陥落の窮地に、救援に駆けつけてきた・・・と、そう思い込んでいた―――
そう・・・「思い込んでいた」―――のです。
彼ら・・・「七魔将」の前身は、とある者の意志の下に集った組織―――でした。
その当時の彼らは、各々が個別の思考を持ちあわすために、その・・・とある者の意志の下に集ったとは云え、組織などと呼べるものではありませんでした。
そのことは、現在でもそうでしたが・・・
ただ、しかし―――ビーネイが同志の窮地に駆け付けたというのも、そのとある者になり代わって自分たちの盟主になり得た人物の、下命によって―――と、思い込んでいた・・・
事実として、パライソ軍からの攻勢が思いの外(ほか)激しく、七魔将の一人でもあるキュクノスを失ったのが痛かった・・・
ビューネイの前では強がりを見せてはいても、本音を云ってしまえば協力は欲しかったのです。
その上でのこの行為に・・・フォルネウスは戸惑いを隠しきれなかった―――
それに・・・〕
フ:お、お、お・・・おのれえぇ~~っ―――貴様、寝返ったというのか!!
ならば―――!!
ビ:フッ―――・・・ようやく尻尾を出したようだな・・・。
それがお前の究極体―――「暗黒体」<アウゴエイデス>なのだな・・・
フ:ナニヲ知レタコトヲ―――・・・キサマモソウダロウガ!
サア…キサマモナルガイイ―――ソコデ、キガネナクプチ殺シテクレルワ!!
〔彼・・・フォルネウスは、喩え自分が最後の一兵になったとて、パライソの攻勢を防ぎきれる自信はありました。
それが・・・彼ら自身の 真の姿 ―――またを、 暗黒体<アウゴエイデス> と呼ぶ、究極体・・・
それが彼らの、最後の切り札でもあったのですから。
しかし・・・その姿は人間の形をとどめておらず―――不気味なまでに変貌を遂げており、もはやこの世の生物とは思えない存在でした。
―――とは云え、その姿が彼らの日常ではなかった理由として、その姿になるには魔素の薄いこの世界では自殺行為に等しかったのです。
いわゆる、彼ら自身の活動源ともなる、魔力などの消耗が恐ろしく激しかった・・・
それでも、フォルネウスが敢えて自分の究極体になった背景には、自分たちを裏切った痴れ者を、どうしても自分の手で始末せずにはおれなかった・・・
しかし―――その考えは、ビューネイの方でも同じでした。
彼らと云う存在を根絶せしめるには・・・彼ら自身の究極体である アウゴエイデス になった時を叩く以外にない―――
そう・・・ビューネイの盟主に―――いや・・・〕