<第百二十五章;停戦条約締結>
≪一節;第一次北伐の成果≫
〔元列強の旧クーナ王城―――ハルナ陥(お)つ・・・
その報は、瞬くの間にパライソの皇城シャクラディアや、同じく「西伐」を完了させていたラージャ方面にまで届いていたのです。
中でも取り分けクーナを取り戻せた功績は大きく、軍隊を編成している兵士の腹は云うまでもなく、
広くはパライソ国民の腹を充分に満たせるだけの物資が行き渡るものと思っていました。
つまり、クーナを陥落(おと)した時点で、当初女皇が掲げた「西伐」「北伐」を起こした理由・・・食に関しての悩みは一気に解消したわけであり、
女皇からすれば「戦争をする理由」は無くなったのですが・・・
それにカルマ側も、自分たちの食にも係わることだから、またもクーナを奪還するための激しい攻勢はあるものと思っていました。
ところが―――・・・
意外にも、当事国からの反応は莫きに等しかったのです。
それと云うのも、やはり理由はあったのです。
そのことを物語る、復旧したハルナ城最上層にて―――・・・〕
リ:やはり・・・攻めてきませんね。
エ:―――つか、ちゃっかりしてるもんだよね〜〜・・・。
今まで、しこたま貯めこんどいた食糧(もの)、ごっそりと持ってっちゃってんだもの―――
これじやあ〜いくらこの城を獲ったって、一つの得にもならないよね〜〜。
あ゛〜〜・・・腹減った―――
ギ:いや―――そうではございますまい。
この国を取り戻せたということは、これから生産される食糧は総て我らのモノになる―――と、云う事でございます。
あ奴らにとっては、今は十分にあるにせよ、それは一時しのぎに過ぎませぬ。
長期戦略に鑑みてみれば、こちら側に優位に傾いているのは必定だと思われるのです。
〔そこには、不思議と腹の満たせた兵士の姿はなく、彼らを統率する将であるエルムやリリアも空腹のままだったのです。
しかし、それもそのはず―――もはやハルナはもたないものと推測した者の手により、
この地に蓄えられていた、穀物などの食糧や物資は根こそぎ引き上げられ―――
この城に備蓄されている兵糧庫には、一粒の米粒など残っていなかったのです。
それに、これでは多くの犠牲を払ってこの国を取り戻した意味がない―――と、思われるのですが・・・
それも、今はそうであったとしても、長期に亘ってみればこの国を取り戻した意味合いは大きいものだと、
元・クーナの将軍であった者の口から助言がなされたものだったのです。〕