≪二節;報告会≫
〔それはそれとして・・・別の日の一コマ―――
この度の「西伐」「北伐」の―――云わば大本営となり得ていたウェオブリ城にて、思いもよらぬ大事件が起きたのです。
それは・・・「西伐」「北伐」の戦線において、いつまで経ってもカルマ側が攻め入る雰囲気は感じられなかったので、
防衛の得意な将に戦線を任せることにし、主だった将は大本営であるウェオブリに、報告会も兼ねて集(つど)ったものでした。
この時―――ほぼ同時刻に大本営入りを果たしたエルムとヱリヤは、ウェオブリの最下層で鉢合わせとなり・・・
あわよ―――またそこで、シャクラディアでの続きが展開されるものと思われたのですが、
二人とも互いを牽制する言葉を交わした以外には、特別これと云って何もなく―――
「西伐」「北伐」の戦線で活躍した将と共に、ウェオブリの最上層に向かったのでした。
そして最上層の会議室と見られる部屋では、大将軍である婀陀那を最上座に迎え、「西伐」「北伐」の成果を報告する場が設けられたのです。
それには―――まづ「西伐」の方には、上座に近い席にはヱリヤを迎え、続いてタケルの親友であるノブシゲや、タケルの実弟であるチカラ・・・
それから、婀陀那の懐刀として名を馳せた紫苑に、左将軍のキリエや虎髯将軍のベイガン―――と、錚々たる顔ぶれだったのです。
片や―――「北伐」の方は、上座に近い席にエルムを迎え、続いてイセリア・セシル・リリアと云った「雪月花」の三将に、
この度から将の列に加わった聖騎士(パラディン)ギャラハットとその養女ヒヅメ・・・
それからミルディンやギルダスと云ったような、こちらも「西伐」に負けない面々が連なっていたのです。
そして―――・・・〕
婀:皆―――ご苦労であった。
各々の活躍ぶりは、陛下のお耳にも届き―――殊の外お慶(よろこ)びであるそうじゃ。
ヱ:詭弁―――ですな、それは・・・あのお方が、命が多く失われることを、お慶びであるはずがない。
ノ:お・・・おい―――
べ:げ・・・あいつ、なんてことを―――
キ:―――・・・。
リ:ですが・・・陛下は、私たちの苦労を鑑みてくれて―――
エ:お黙り、リリア―――征東将軍・・・
リ:―――エルム様?!
エ:確かに―――驃騎将軍の云われるように、私らが知る仁君の魂をお持ちである女皇陛下様なら、戦のことについてお慶びであるはずがないだろう・・・。
では―――大将軍殿、女皇陛下は私たちの活躍の・・・何においてお慶びを感じられたんだい。
婀:―――なるほど、これはちと言葉足らずでありましたな・・・。
いかにも―――両将軍の云われるように、表情そのものとしてはお暗いものでありましたが、
これから来る民たちの安寧・・・いわゆる明るい表情を期待して―――の、お言葉でありまする。
それに・・・陛下は、これより無期限での停戦をお望みである―――
それについてのこれからの交渉は、水面上―――水面下共に為さねばならぬことではあるが、
そのことについては大本営であるウェオブリではなく、皇城でなしたいように思うのじゃ。
〔その場では、粛々たる雰囲気の中にも端的に執り行われ、戦役の報告以外にも重要な話し合いがなされたのです。
そのうちの一つが、争い事を好まないとする女皇陛下の意思―――無期限の停戦が覗われはするのですが、
事の内容は女皇陛下ご本人も膝を交わらせての談義を進めなければならないため、一旦はシャクラディアに戻る決議がそこでなされたのです。〕