≪四節;哀しき動機≫
〔それに、タケルとカインは、数奇にも同じ運命を辿っていました。
いかなる理由があれ、彼らは国の官職を辞退し、下野した者同士―――・・・
そして一念発起し、それぞれの矜持の下に行動を起こし、タケルは旧フ国へ―――カインはカルマ国へと仕官したのです。
しかしながらカインは、周囲(まわ)りの人間からすれば、どうして彼ほどの智者がカルマに仕官したのか、その理由が知れませんでした。
けれども・・・彼からすれば、ある明確な理由を持ってカルマに奔(はし)っていたのです。
そしてそのことをするために、新たにギャラハットとヒヅメを仲間に加え、「埋伏の毒」の役目としてカルマに潜伏したのです。
そう・・・確かに、ギャラハットやヒヅメからすれば不本意極まりなかった―――それは当然、カインでもそうだったでしょう。
けれども、歴史を紐解くうちに、カルマを倒すのは並大抵なことではないと判っていた―――
判っていたからこそ、自分たちが偽ってカルマに参内する事によって、内部からの崩壊に勤めようとしたのです。
そしそのことは、自分たちよりも先駆けてカルマに潜り込んでいた協力者―――
シホ=アーキ=ガラティーナの導きによって、その大半を成就するに至ったのですが・・・
この度のハルナ陥落により、彼女からはお役御免を云い渡された―――
そう・・・ここに、彼らはようやくにして自由と云う翼を得―――カルマに決別しようとしていたのです。
けれども・・・〕
ヒ:あ・・・あそこにいるのは―――カインさん?!
ギ:なんと云うことを・・・ビューネイ殿からパライソに降るように云われたはずなのに・・・。
カ:やあ・・・お二人―――
でも、これが私なりのけじめのつけ方なのだよ。
私は・・・なんであれ、あんた達に苦汁を強いることばかりを押し付けてきた。
クーナを獲ったのもこの私だし、捕縛の辱めを味わわせたのもこの私だ―――・・・
それに、無理を承知で頼み込み、カルマの一員とならさせたのも私だし、総ての責は―――この私にあるのだよ。
ヒ:ナニ云ってるんです・・・水臭いじゃないですか―――!!
そりゃ・・・確かに、カインさんから捕縛の辱めを受けたりはしたけれども・・・
そのあとのことを考えれば、あたいたちはカインさんのことを恨んだことなどなかったんだよ―――!
ギ:その通りですぞ、カイン殿。
なにも、カルマへと降ったのは・・・偽りとは云えど、ワシら自らの意志でもあったし、
それにもし―――ワシらの意志ではなかったら、あの時必死の抵抗を試みたであろう。
だから・・・あの時そうしなかったのは、半ばワシらの意志でもあったのだ!
〔喩え低級官位とは云えど、この国の人間であるタケルを襲った事実は拭いされるはずもなく、
しかも彼の愛妻である婀陀那や、カイン自身の実妹であるセシルに目撃されては、いかなる情状の酌量の余地すらなかったことでしょう。
けれども、僅かとは云ってもこの大罪人にかかる罰を少しでも軽くしようとするため、
そこにいたギャラハットにヒヅメは、今に至るまでの経緯を詳らかにし、カインの弁護を行ったのでした。
しかし・・・その彼らの弁護を聞いたこの人物は―――〕