≪二節;故事≫
タ:ワシは・・・ここにお集りの皆様方よりも、未だ低い身分にあります。
―――で、あるにも拘らず、この度陛下よりのお声がかかり、「第一次征伐」全戦線の作戦の立案をいたした次第です。
このことはワシにしても身に余る光栄でした―――だからこそ、陛下のご期待に応えたい・・・そう思い策を練ったものでしたのに。
東部方面には隠れた賢人がいるとは耳にはしていましたが、それがよもやカルマに奔(はし)っていたなどとは、小官でさえも予測だにしておりませんでした。
その彼が―――カルマから我が国に降ってきたのです。
これは、その罪で彼の才を潰すよりも、これからも大いにパライソに役立ってもらいたい―――
非才なるワシの策を補う象(かたち)で、彼には助力願いたいのです。
それに・・・彼には、「彼自身と同じ量の金よりも価値がある」―――だからこそ、ワシ自身が願い出ているのでございます。
〔確かに―――タケルの「西伐」に関する軍略には、諸将・諸官共に認めるところではありました・・・
―――が・・・
こと「北伐」に関しては勝手が違うからか、予(かね)てより想定していた出征予算の範疇を越え始めた・・・
このことも、カルマからの停戦要求を呑まざるを得ない要因の一つともなり得ていたわけなのです。
それに、そのことの一番の原因ともなっていたのが、タケルに匹敵する軍略を持ち合わせるカインの存在・・・
その彼が、この度パライソに降る事による利を、タケルは切(せつ)に説いたのです。
こうして―――タケルの巧みな説得により、パライソの北部地方を管轄する「北部総督」に就任したカインでしたが・・・
実はこのことは以前から示し合わせていたものらしく―――そのことは彼らの会話中にも現われていたのです。〕
ヒ:それはいいんですけど―――あたいたちを助けてくれた、タケル・・・って人にはお礼を云っとかないといけませんかね。
カ:―――っははは、それは無用と云うものだよ。
なにしろ彼は、こうなることを予測していた・・・ま、云っちゃなんだが―――今私たちがこうしていられるのも、彼の策の内なのさ。
ギ:なんと・・・それでは―――
カ:フフ・・・私も相当な狸だが―――彼はまださらにその上を行く大狸・・・ってなわけさ。
なぜか・・・? それはだね―――彼とは、私がカルマに奔る直前に会っている・・・と、したなら?
ヒ:それじゃ・・・今回のこの事態になるってことは、すでに織り込み済み―――ってことだったの?
カ:そう云う事になるかな―――それに第一、彼は今回の戦役の全作戦に係わっていたそうだが・・・考えてみてはどうかな。
そんな人間が、果たしてこんな不手際をするものなのか―――
それに、私としてはこう思う。
まあ確かに、彼は全作戦の立案をしただろうが、もし彼が・・・実際に一軍を率いて陣頭に立っていたならば―――と、ね。
〔彼らが以前に示し合わせていた―――と、云う表現に語弊があるとするならば、
カインはタケルの―――タケルはカインの―――これから巻き起こる戦乱の世を想定しての、彼らの内に秘めた軍略を、
口にこそ出さなかったけれども、お互いが判っていたのではないか―――・・・
そんなことが読み取れる会話の内容だったのです。〕