≪五節;墓参りの母娘≫
〔閑話休題―――
不服はあったものの、結局は姉であるガラティアからの依頼に従い、この場所に来たジィルガと―――
ビューネイからの意向を受けて、彼の代わりにこの場所に赴いたバルバリシア・・・
切り立つ岩肌に、足元は岩が不規則に隆起して、それが人間ではないにしても魔族だったとて、その場所に辿り着くまで相当に困難は極めたのです。
けれどもジィルガは知ったる勝手からか、思うように歩を進めていた―――・・・
それもそのはず、かの人物をこの場所に埋葬し、奉ったのは、ジィルガだったのですから。
それに・・・奉竜殿に奉られている人物は、過去にジィルガ―――いや、女禍と苦楽を共にしたことのある、盟友だったことも判ってくるのです。
とは云え・・・これから自分たちがしようとしていることは―――・・・
倫理的にも、そう云う事が赦されていいはずもないことだと判っているだけに、ジィルガの足取りは重たかったのです。
そうこうしているうちに、奉竜殿内部に入った二人は、このドルメンのご神体だとも云える・・・
今では「ドラゴン・オーブ」だと云われる宝珠が安置している場所に達していたのです。〕
バ:マエストロ・デルフィーネ・・・もしやそれが―――
ジ:ええ―――この宝珠こそは、あの子の魂を封じたモノ・・・
須らく生命(いのち)の刻(とき)を終え、駆動する肉体は滅びようとも魂は不滅―――
けれど・・・今私たちがしようとしていることは―――・・・
〔ジィルガが、珍しく姉の云う事に反発をし、今回のことを実行に移すのに躊躇(ためら)った理由―――
ことの理由の如何は何であれ、今自分たちがしようとしていることは、生の刻(とき)を終えて安らかなる眠りについている者を無理矢理起こす・・・
そのことはつまり、死者を冒涜していることであり―――なによりも、これからその人物に協力させようとしていること自体が、
その人物並びに・・・同じ種属であるハイランダーの二人を、辛い事実に直面させることだと判っていたからなのです。
しかしこの時―――・・・
ジィルガとバルバリシアが奉竜殿を訪れ、「ドラゴン・オーブ」を手にしていた・・・と、同じ頃―――
その二人も、自分たちの先祖に当たるこの人物の供養と云う事も兼ねて、この場所を訪れようとしていたのです。〕
ヱ:ふ・う―――・・・相も変わらず険しいわね・・・。
キ:それにしても―――随分と先延ばしになってしまいましたね。
ヱ:仕方のないことよ・・・それにしても、お前のあのスキルが役立つことになるなんてね。
キ:素直に嬉しいです―――さぁ、あともう一息・・・頑張りましょう!
〔その二人こそ―――ヱリヤとキリエの母娘・・・
ハイランダーであるこの二人が、例のドルメンを訪れようとしていたのも、
その場所に奉られている人物が、自分たちにとっての祖先でもある―――「龍皇」だと云うことも一つにはあったのですが、
やはり・・・先祖を大切にしなくては―――と、云う事で、お墓参りも兼ねていたのでした。〕