≪六節;すれ違い≫
〔人間・・・況(ま)してや魔族でさえ歩行困難を極める難所を、的確かつ安易なルート選択で進み行く者達・・・
取り分けヱリヤの娘であるキリエは、その分野に秀でていたモノと見え―――あのジィルガ達よりも短時間で、ドルメンの入り口まで到達していたのです。
そのことをいち早く感付いたジィルガは―――〕
ジ:あら・・・これはちょっとまづい展開になってきたわね。
バ:いかがいたしましょう―――マエストロ・・・
ジ:ここであの子たちと争い合っている場合じゃない―――
ここは一つ、裏技を使ってここから離脱することにしましょう。
〔ここに奉られている人物と同じ種属である二人・・・ヱリヤとキリエ―――と、鉢合わせになってしまうのは、今の段階では最も好ましくないこと・・・
そう感じたジィルガは、素早く空間に「ヴェリザの方陣」と呼ばれる魔方陣を描き、そこからまた更に「移送方陣」と呼ばれるモノを描いて、本来の目的の方を達したのです。
それから暫くして・・・ヱリヤとキリエは、「ドラゴン・オーブ」が安置されているはずの、ドルメン最深部―――祭壇まで来ていました。
ところが―――・・・〕
ヱ:あっ・・・これは―――どうしたことなの?!
キ:ドラゴン・オーブが・・・ママーシャのママーシャに当たる、スターシア=ラゼッタ=アトーカシャ様の魂を封じた宝珠が・・・無くなっている?!!
ヱ:――――まさか?!!
〔そこで母娘が目にしたものとは・・・本来ならば祭壇の上に安置していなければならないはずのモノが―――無くなっているという非常事態でした。
しかもヱリヤは、彼女自身の胸の内が騒いでいたのか、すぐさま祭壇の隣にある部屋―――
彼女たちの祖先である、スターシア某と云う人物の副葬品がある、宝物殿に足を向かわせたところ・・・〕
キ:あ・あ―――・・・
ヱ:やはり・・・私のママーシャのグノーシス「モルニヤ」並びに、「神槍グリマーロンギヌス・スプートニク」までもが・・・!
キリエ―――お墓参りは中止よ! 急いで戻って、事の次第をご報告申し上げなければ―――!!
〔悪い予感は・・・当たっていました―――
自分たちの祖先の魂を封じた宝珠を始め、ハイランダー達の中でも至宝とされている武器などを、
その悉(ことごと)くを、何者かによって強奪されていたことに―――ヱリヤは危機を感じ、一旦シャクラディアに戻る選択をしたのです。〕