≪七節;復活の儀式〜リザレクション≫
〔それはそうと―――コキュートスに戻ってきたジィルガ達は・・・〕
ジ:お姉様―――これです・・・
ガ:ほいよ、御苦労さん・・・に、しても―――ちょいと厄介なことになって来ちまったね。
ジ:はい・・・私もまさか、今回あの子たちと鉢合わせになろうとは思ってもみませんでした。
ガ:本当に―――“偶然”てのは恐ろしいもんだよ・・・。
こちらも少しばかり計画を早めないといけないかねぇ。
〔事の詳細を語らずとも、ずっと以前から「総てを知りし者」と呼ばれていた姉は、かのドルメン・・・奉竜殿にて何が起こったかを知っていました。
自分の予測を大きく外れ、あわや・・・ニアミスを起こしそうになった―――
星々の動きを観測し、この日なら大丈夫だろう―――と、思って実の妹であるジィルガを使って実行に移させたのに・・・
ナゼ・・・今回のような事態に至った―――?
もしかすると、他の何者かの思惑がそうさせているのか・・・
そう考えると、死せる賢者にはある一つの事実しか思い当たりませんでした。
けれども、今は自分の計画を進めることが第一であるとし―――
コキュートス内部に秘かに設置させてある、自分のラボ(研究施設)に足を向かわせると、
そこには、調整浴槽に浮かんでいる―――人形(ひとがた)が一つ・・・
顔の表情と云うモノがなければ、男女の区別もない・・・そんな物体を前にし―――
ガラティアは、今回ジィルガ達が持って帰った物の一つ、ドラゴンオーブを浴槽の内に入れると、
その人形(ひとがた)と云う肉の塊はドラゴンオーブを内に取り込み始め・・・徐々に、ある特定の人物を模(かたど)り始めたのです。
頭からは―――金色(こんじき)の髪が伸び、目・鼻・口などが出来・・・
胸部も豊満に膨らみ、臀部からは―――ある種属の特徴である尻尾が伸びてきたのです。
そして・・・総てが定着し終わると、浴槽内の溶液が一気に抜かれ―――
するとそこには、一人の女性の姿があったのです。
その一方で―――奉竜殿での異状を感じたヱリヤとキリエは、シャクラディアに戻ってくると早速女皇・アヱカに目通りをし・・・〕
ヱ:陛下―――重要なお話しがございます!
今日、あなた様からのお勧めで、私の母が眠る奉竜殿を訪れましたところ・・・
私の母の・・・魂を封じたモノと、武器並びにグノーシスが、何者かによって盗まれた由にございます。
ア:なんだって・・・ラゼッタの―――?
それに、奉竜殿は並みの者達が向かおうと思っても、そう簡単に辿り着けるところではないのに・・・
・・・だとするなら―――
ヱ:はい・・・仰る通りです。
それに、そこで感じた違和は、それだけではないのです―――
〔ドラゴンオーブやアーティファクトの類を盗られていることは、その事実だけでも重大なことだったのですが、
ヱリヤはその時、その事実とはまた別の不安材料を感じていたらしく、そのことを自分の主に忌憚なく語ったのです。
その不安材料とは―――・・・確かに、僅か数画前までは、その者達はその場にいて、自分たちと入れ違いざまにいなくなった―――・・・
しかも、離脱手段も並大抵の者が扱える代物ではない・・・空間に魔文字を描くと云う高等技術を持ってなされていると云う事に、
ヱリヤ達はある存在のことを気にせざるを得なくなってしまったのです。〕