≪二節;敵か味方か≫
〔而して、その不安は的中してしまうのでした。
何かしら・・・良くないことが起こるかもしれない―――と、思った夜・・・
エルム邸内に何者かが侵入していたのです。
そのことにいち早く気付くエルムなのですが―――・・・
妙な事に、感じる気配からは、敵・・・況してや味方のモノは感じられなかったのです。
けれど、いつかどこかで感じたことのある―――そんな懐かしさも感じる中で、次第にエルムの緊張も張りつめ始め・・・〕
エ:・・・誰なんだい―――そこにいるのは・・・。
私は、ずっと前から感じているんだよ・・・。
どこのどいつかは知らないが、私の住居に黙って入るのは感心しないね。
―――・・・。
エ:―――黙っていないで、何か云ったらどうなんだい!
私だって・・・お前のような者を相手にするほど、暇じゃないんだよ!
〔そこにいるのは感じている・・・なのに、向こうからは何の反応も示さない―――
薄暗い部屋の向こうで、こちらを見ているのは判る・・・
しかし―――その存在は、敵でもなければ味方でもない・・・
少なくとも、そのどちらかが判明すれば、この未明の訪問者への対応もできようはずなのに・・・
とは云え、その時点でエルムが判っていた事実が一つ―――
この・・・未明の訪問者は―――強い・・・
恐らく、「帝國の双璧」として祀り上げられている自分たちよりも、格段に・・・
だからこそ、そんな強者が未だ持って沈黙を貫いていることに、エルムの不安は尽きることがなかったのです。
すると突然―――エルムの影が伸び、そこからは普段他人の前に姿を見せない、あの存在・・・
先般、エルムが掛けていた「保険」の発動により、再び今世に復活を遂げた・・・〕
大:フッ・・・フ・フ・フ―――何者かと思えば、珍しい客が来たものだ・・・。
今宵は、よく雷が騒ぎ出すものと思っていたらば―――まさか汝も・・・今世に復活したとは・・・な。
誰:・・・話には聞いていたが―――まさか本当だったとはな。
古えよりのタワーリシチ―――エルムドア=マグラ=ヴァルドノフスク・・・。
エ:え―――っ? お父様の名を知る・・・お前は―――?
誰:おや―――そちらにいるフロイラインは、確かお前の娘である・・・エルム=シュターデン=カーミラ―――ではないか。
私のことを・・・もう忘れてしまったとは・・・・・淋しい限り―――だ、な。
エ:あ・・・あ、あっ―――! あなた様・・・は!