≪三節;“龍皇”と“大公爵”≫
〔あのエルムが――― 一目見て驚いてしまった人物・・・
それは、意外性もさることながら、エルムも7万年前以前から非常にお世話になった人物だったから・・・。
それに、その人物の種族としての寿命が尽き、葬儀にも参列したはず―――なのに・・・
あの・・・往時の美貌をした、ハイランダーの「龍皇」と呼ばれた人物が―――自分の住居を訪ねていたことに、エルムは甚だ驚いてしまっていたのです。
それにしても・・・どうして―――〕
エ:それにしても・・・どうして―――スターシア様が・・・
ス:ん? その理由を知りたいのか―――フロイライン・・・。
大:フン―――大方の予測はついている・・・。
恐らく、自らの策に手詰まりを感じたある者の・・・苦肉の策によって―――なのであろう。
ス:まあ、そんなところだ・・・。
大:―――それで? 再会を祝して一杯飲(や)りにでも来たのかね、ラゼッタ。
ス:そうだな―――ではお言葉に甘えるとしようか・・・マグラ。
エ:ちょ、ちょ、ちよっと―――お父様?! 何を和んでいらっしゃるんですか!
この方は、もう亡くなられていて・・・しかも、私たちの知らないヤツの意向を受けて、この世に復活をしているんでしょう?!
だったら―――・・・
ス:―――だったら・・・この私を滅ぼすと云うのか・・・
随分と、大きな口を叩くようになったものだ―――なぁ・・・フロイライン・エルム。
だが、出来るものならばやってみるがよい・・・かつて、私と仕合って一度として勝てたことのないお前が、
今なら私に勝てる・・・と、息まいているのだから、な。
エ:うっ―――く・・・
ス:それとも・・・お前の父親の前で、表現できぬくらいに辱めてくれようか。
エ:え・・・ええ〜〜っ―――?!
大:フ・フ・フ―――余の娘をいびるのはその位にしておいてもらおうか。
汝も、今はそのことが目的でここに来たのではないのだろうからな・・・。
―――グレゴールの5,000年物だ、余や汝よりも若いが、いかがかな・・・
ス:・・・では、それを頂くとしよう。
〔その未明の訪問者の正体こそ、スターシア=ラゼッタ=アトーカシャ―――・・・
そう、この人物こそが奉竜殿に奉られていた存在であり、本人としては不本意ながらも、自身より上位の存在の意向によってこの世に復活を遂げた者・・・
そして―――ヱリヤの母にして、ヱリヤやエルムが頭が上がらない数少ない人物の一人・・・
そんな人物が、どんな理由をして自分の住居を訪問していたのか、エルムには知るはずもなかったのですが・・・
エルムの父であるエルムドア大公爵には、太古よりの知り合いがどうしてこの邸内に来ているのか、判っているようだったのです。〕