≪二節;女皇の印象≫
〔そして―――サライ国よりの外交特使が到着すると、すぐに玉座の間に通されました。
そこで特使は、玉座に鎮座する女皇と、その傍らに仕える寵臣を見比べ―――・・・〕
特:(この方が・・・「古(いにし)えの皇・女禍の生まれ変わり」だと云われているアヱカと云う女性・・・
そしてその傍らに仕えるのが―――ふむ、これもまた見事な偉丈夫・・・)
―――この度は、我らが教主・・・教皇・ナユタよりの質問を携えて参りました。
尽きましては、忌憚のなきお応答(こたえ)をなされまうよう・・・小官は望みます。
ア:マハトマ教皇ナユタ―――彼は今もご健在なので?
特:は? はあ・・・ですがしかし―――教皇様と女皇陛下が、ご面識あるものとは・・・
ア:ああ、いや―――過去に一・二度ね・・・
それより、どんな内容の質問なのだろう。
特:はい―――それならばこちらに認(したた)めております。
〔パライソ国を統べる人物と、第一の側近と見られる偉丈夫と接見した特使は、
世間一般に広められている噂に、寸分の違(たが)いのないことに感嘆することしきりでした。
それに、この様子ならば、友好的に物事が進められるものと思い、
事実上のサライ国当主である教皇ナユタが、直接記したと思われる書簡をアヱカに見せたところ・・・〕
ア:ふむ・・・どれ―――
―――なるほど、あなた達の主の言い分は、実(まこと)もって尤(もっと)もだと思います。
ですが―――私にしてみれば、彼らは礼節と云うモノを知らないのだろうとも思います。
力を以(もっ)て弱者を従え、また素直に従属したとしても、扱いは奴隷並みかそれ以下―――とも聞いています。
それに、従服しなかった場合には、見せしめとして一族郎党・・・諸(もろ)とも公開処刑にされた―――との例も聞き及んでいます。
確かに―――当国としても、最初は人道的倫理・道徳観に基づき、話し合いでの折衝に取り組んできましたが・・・
それを彼らは一方的に無視をし、そればかりか一層従服しない者達への風当たりが強められてしまったのです。
特:そんな経緯が―――・・・
ア:それでも私は・・・我慢を重ね―――いくらこちらが莫迦を見ても云い、そう思われても云い・・・と、さえも思っていのですが、
そのことを国中の官達に唯唯諾諾とさせるのには、いささか苦労をさせられました。
そんなことが云えることの一つとして、当国―――パライソ国の土台は、旧フ国のモノを引き継いでいるのですが、
先般実施した官の登用試験で、フ国のみならず広く他国の者達の意見を取り入れるようにした―――
思えば、そのこと自体が意見の多様化を招き、けれどそのことは決して悪くはないと思っています。
結果としては―――飽くまでの話し合い路線か・・・徹底しての抗戦路線に分かれてしまいまして・・・
特:それで―――已(や)む無く抗戦路線を択んでしまった・・・と。
ア:結論からすればそうなってしまいますね。
それと云いますのも、当初では話し合い派の方が多数を占めていたのですが、クーナ国をカルマ国に取られてしまうと、
当該地方からの食糧入手が困難となってしまったため、体制が逆転しまったものと―――・・・
特:つまり―――今まで少数派だった者が、多数派を上回ってしまった・・・と。
ア:そうです―――そうなってしまっては、いくら私だとて耳を傾けないわけにもいかなくなってしまって・・・
そこで、今回の戦争に関してだけは、旧クーナ国の所領を回復させる・・・と、云う名目で、各地に渡って戦線を展開させた―――と、こう云う事になります。
〔予(あらかじ)め用意されていたのでは・・・とも勘繰られなくもない、実に流暢にして耳触りのよい質疑応答がそこにはありました。
事実―――当時のアヱカの回答草案は、タケルが起こしたものであり、アヱカ当人もこの対策には同席しており、
しかもあまり手直しをしなかったことからも鑑みれば、全くタケルと同じ意見だったことが判るのです。〕