≪三節;アヱカ憤慨の理由≫
〔そんな質疑応答を受け、パライソ国女皇に好印象を受けたサライ国の特使は、この接見の最後にある案を提示したのです。〕
特:ふぅむ・・・そちらの事情はよく判りました。
ですが―――戦争におきましては、どちらにも非があると云えます。
ですから当方と致しましては、パライソ並びにカルマ両国に、それぞれのペナルティを課したいと思います。
その内容と致しましては―――
〔事情・云い分は酌量すべき点がある―――とはしながらも、やはりその行為自体そのものが“悪”だとする戦争はいけないものであるとし、
サライ国は、パライソ国とカルマ国の両方に、それぞれのペナルティを課すことにしたのです。
しかし・・・パライソ国に課せられたペナルティと云うモノが―――〕
ア:・・・なんですって? わたくしたちの―――友好国の一つである、ヴェルノア公国の解体?!
特:はい―――今回の戦争で、パライソ国の戦局が優位に運べたのも、
偏(ひとえ)に「軍事大国」と称されている当該国からの武器防具の支援があったからではないか・・・と、私たちはそう捉えております。
故に、今後は当該国からの武器防具の輸出がまかりあってはならぬように―――・・・
ア:なりません―――そのようなことは絶対に!!
特:はあ? ・・・ですがしかし―――
ア:それに・・・第一、ヴェルノアからそのような支援、わたくしたちの国は受けてはおりません。
もしあったとしても、こちらの国境付近で荷を留めておき、かの国の公主様であられる婀陀那=ナタラージャ=ヴェルノア様に、事の真意を質してからにいたします。
特:ならば・・・どうしてカルマ国に勝てた―――と?!
ア:違うのです! わたくしが申しているのは、そのようなことではないのです!
一つ国の解体―――そのことは云わば、その国に住まう者達にとっては、自分の故郷と呼べるものがなくなってしまう事と同じではありませんか!
国と国が、おのれの領土拡大を狙って戦争を起こす―――
確かに、今回のわたくしたちの行為は、あなた達にはそう映ったのかも知れません・・・
ですが―――云われもなき嫌疑で国としての意義を失くされた時、そこに住まう者達はどうすればよいと云うのでしょうか?!
幸い、現在国として成り立っている処は、そのような心配をしなくてもよいのかも知れません・・・
ならば、明日(みょうじつ)から、あなた方の国―――サライの国としての意義を、わたくしの名において剥奪する・・・と、云われた時、あなた方はどうすると云うのです。
特:――――!
ア:今回起こした戦争の処分―――パライソ国は私の名において甘んじて受ける所存です。
ですが、ヴェルノアに関しては、将軍の一人や二人は参加をしたのかも知れませんが、それ以上の係わりは一切ございません。
それは、このわたくし自身が認知する処ではないからです。
ですから・・・処分としては、別のものにされてください。
〔サライ国から求められた喧嘩両成敗の内容―――
カルマ国に関しては、向こう三年の間、他国との折衝―――交流の禁止、並びに軍事権の剥奪・・・
そして、パライソ国に関しては―――・・・
現在、パライソ国と准同盟国の関係にあり、サライ国の評定の内でもその話題が取り沙汰された・・・軍事大国・ヴェルノアの国権を奪うだけのものだったのです。
しかし・・・この処置に、唇を震わせ―――怒りの色を露わにした女皇・アヱカは、
以前にもあったように、国一つの意義を失くすと云う事は、同時に今までその土地に暮らしている者達を路頭に迷わせてしまう結果になり得てしまうと云う事で、
その心情も穏やかではなかったようです。〕