≪四節;意外なる真実≫
〔女皇陛下の、その怒りの出処は―――自国の利権を追及してからのモノではなく、
どちらかと云えば他国の・・・それも領民たちのことを思えばこその言動である事に、サライ国特使は感心もし、また驚いてもいたのです。
とは云え―――これだけを見る限りでは、今回のサライ国との折衝は物別れ・・・先送りされ、特使も仕方なくサライ国へと戻ったのです。
ところが・・・そのあとで―――〕
タ:陛下―――・・・
ア:ああ・・・うん―――判っている。
折角上手く物事が運べていたと云うのに・・・少し感情的になってしまったね。
タ:いえ・・・実はそのことに関してなのですが―――
ヴェルノア製の武器並びに防具、それが東部戦線の一部で流用された形跡があるのです。
ア:えっ?! どうして―――・・・どうしてそんなことを・・・それも、今更になって?!
タ:お忘れでございますか―――かの国の当主であるヴェルノアの公主は、ワシの家内である婀陀那なのです。
その彼女が、「善し」とすれば・・・
ア:なんてことを・・・迂闊だった―――
確かに、彼女自身が国の主なのだから、その権限で通してしまうことは十分に考えられることだった。
だとすれば・・・どうしよう―――
タ:そのことならば―――いかばかりかワシに策がございますが・・・よろしいでしょうか。
〔パライソ国女皇であるアヱカが急に感情的になってしまうまで、サライ国との折衝は順調に進んでしました。
しかしそうなってしまったことで、互いの意志の疎通が難しくなり、物別れに終わってしまったことを、アヱカ自身の口から「残念なことではある。」と、紡がれたのです。
けれど、アヱカ自身の矜持もそこにはあったため、アヱカばかりを責められないとはしながらも、タケルは一つの真実を主君であるアヱカに伝えたのです。
それが―――限られた戦域ではあるとはしながらも、ヴェルノア製の武器・防具が流通されていた・・・と、云う事実。
とは云っても、所詮剣や盾も消耗品なのだから、その程度は仕方がないとは思うのですが・・・
サライとの折衝の場で、アヱカが断言してしまったことに、殊更後悔の念が募ってきたようです。
そこでタケルは、事前にそのことを伝えおかなかった自分の責任もあるとし、一つの策を献上するのでした。〕
タ:今件のことは、事前にそのことを知っていながらも、アヱカ様に知らせておかなかったワシの非も重なっているところもあるわけなのですが・・・
なにもそのことだけで、アヱカ様に非難が集中するのは、ワシの思う処ではないのです。
・・・が―――やはり世間体と云うモノを考慮すると、あなた様に非難が集中してしまうため、今度はこちらから・・・
つまり、返礼の外渉団を派遣して、忌憚ないお詫びの気持ちを明らかにすれば、かの国の留飲も下げられると思うのです。
〔タケルが打ち出した打開策とは、折衝当時の場では明らかとされなかった新事実があるとし、
そこで甚大な誤解があった―――との、旨の詫び状を送り、サライ国に留飲を下げてもらうことで、
改めての処分を受け入れる姿勢があることを示してはどうか―――と、云うモノだったのです。
ところがアエカは・・・彼女自身どこか思う事があったのか、タケルが策を講じている間にも係わらず、漫(そぞ)ろな様子でもあったのです。〕