≪三節;外渉団≫
〔かくして、サライ国の意向をそのままに伝えた使者によりパライソは外渉団を組織し、
そのまとめ役である団長には、パライソ国の大鴻驢である緒麗美耶が就きました。
・・・が、しかし、彼女には―――この外渉団の内に、彼女自身の上司とも云うべき人物が紛れていることなど、知る由もなかったわけなのですが・・・
ともあれ、サライ国の聖都・ヴェルフィオーレを目指した一向は・・・〕
婀:ふう―――・・・
ア:お辛いですか、婀陀那さん・・・
婀:いえ・・・普段から馬に乗りつけておりましたから、足腰が鈍(なま)ってしまっておるようです。
あたら、醜態を晒すばかりか―――迷惑をかけてしまって・・・申し訳ない限りです。
ア:それはわたくしのほうも―――・・・
このわたくしの突飛な思いつきとはいえ、婀陀那さんにも苦痛を伴わせることになってしまって・・・
婀:いえ―――そこは心配する処ではございませぬよ。
それにしても―――・・・姫君の知る、妾に所縁の深い人物とは何者なのでしょうな。
妾も、そのことを知ってからは、そればかりが頭にあるのですが・・・とんと思い浮かびませんで―――
ア:・・・なるほどね、確かに。
けれど、今そのことを話したとしても、君には信じてもらえないだろう・・・。
だから、まづは見てから―――説明なら後でどうにでもついてくる。
それにしても、出発前にも云い含めたように、私たちがどうしてこんな処にいるのか・・・バレないようにしないとね。
〔徒歩(かち)での随行に、思わずも溜息をついてしまう婀陀那。
そのことをアヱカは気遣いもするのですが、自身の不甲斐なさでそうさせてしまったことに悪びれてしまうのです。
しかし婀陀那は、実際的には徒歩による疲労感でそうしてしまったのではなく、思っていた以上に重量感の感じる麻製のロープに、
歩法―――いつもは、シャクラディアやウェオブリ・・・果てはアルルハイムの城中で、堂々としていた―――いわゆる背筋を伸ばしたそれではなく、
云わば自分たちが従えさせている民や官のそれ・・・腰を低くし、身を屈めながらするようなことに、ついぞ出てしまったようなのです。
けれどアヱカはそうではなかった・・・と、云うのも、彼女はパライソ国の女皇陛下である以外に、
自分の趣味―――いわゆる、農耕作を愉しんでいることもあり、自然と足腰は鍛えられていたようなのです。
その証拠に・・・その日の宿では、筋肉痛に悩まされて中々寝付けられなかった婀陀那とは好対照に、
その傍では安らかな寝息を立てて寝ているアヱカの姿が・・・そんな面白い光景もあったようです。〕