<第十三章;古都にて・・・>

 

≪一節;古代遺跡(ドルメン)

 

 

〔さても、アヱカ姫とショウ王の謁見が、粛々と行われていた最中(さなか)、一方のこちら・・・都見物組の三人は―――と、いうと・・・

 

それが一行は、愉しみにしていたはずの都見物には興じてはおらず、代わりにウェオブリから南西に外れること一里余りにあるという・・・

とあるドルメン(=古代の遺構)に、その足を向かわせていたのです。

 

それでは―――そのドルメンとは・・・・

言い伝えるところによると、過去にそこを中心に栄えた或る国・・・実に7万年前に遡る、伝説上の「皇」が、その居住としていたという――――

 

『皇城・シャクラディア』―――・・・

 

そこにいたのです。〕

 

 

キ:ここに来るのも、実に7万年ぶりとは・・・・年はとりたくないもの、だねぇ。

  ご覧よ―――私達が植えた庭木、ぜんぜん手入れしてないもんだから、鬱葱(うっそう)と茂(しげ)ちまって――――

 

コ:あの辺りでしたかね――― あたし達が植えたの・・・

乃:どれもおなしにみえますみぅ。

 

 

〔そこは―――まさに杜の中の都・・・匂い立つような若葉に囲まれた、癒やしの杜の中にひっそりと佇むドルメン・・・・

彼女たち三人にとっては、懐かしさばかりが残るこの場所で、何に思いを馳せていたのでしょうか・・・・。〕

 

 

キ:ほら―――あそこでお方様が・・・・

コ:あそこでアタシと丞相様が・・・

乃:あそこで・・・あたちとじょかさまが・・・・

 

 

〔想いは、巡っていたようですね・・・・。

 

それはそうと、彼女達がここに来たのも、何も昔の遺構見物などではなく、ある処――――

このドルメンの奥深く、内部に赴いて何かの報告を済ませることにあったのです。

 

そして―――その遺構の『正門』『中庭』『正面大門』と抜け・・・今は城内『大ホール』の中。〕

 

 

コ:い――――・・・いよいよ・・・ですね。

乃:う・・・・うんっ。

キ:さて・・・・開くよ――――

 

 

〔大ホールより通ずる、一際大きな扉・・・その扉にキリエ婆が手を翳(かざ)すと、何かでロックされていたであろう扉が、重々しくも徐々に開きだし・・・

やがては彼女たち三人を、暖かく迎え入れられるように、一杯に開ききったのです。

 

そして、彼女達が、その部屋に一歩入るなり・・・・

彼女達にかかっていた、何かしらの呪縛が強制解除され―――

 

キリエは―――老婆の姿から、うら若き娘の姿に・・・

コみゅと乃亜は―――幼い子供から、大きな動物耳と尻尾をつけた姿に・・・・

 

そう、彼女達本来の姿になったのです。〕

 

 

コ:元に・・・戻ってしまいましたみゅ。

乃:・・・・・・・。

キ:仕方がないわよ・・・・だって、ここはあのお方が居られた場所、『玉座の間』なんですもの。

 

 

〔そう・・・その場所こそは、「皇」が玉座に座り―――諸百官たちに対して法の布令や意見の交換、また或いは賞罰の見定めなど、あらゆる催事が行われた場所でもあったのです。

 

でも、しかし――――かつては、眩いばかりに輝いて見えた黄金の玉座も、ススホコリが付き、

大理石を張った床も、そのところどころが割れ欠けしているようで、かつての威厳さえもなくなったように見えたのです。

 

ですが――――・・・〕

 

 

キ:それにしても―――― さすがにちょっとこれはひどいわね。

コ:キリエ様ぁ・・・ここ――――

 

キ:はいはい、判っているわよ。

 

 

〔7万年という、気の遠くなる時間は、かつてはあんなに栄華を誇っていた王国を凋落させるには、十分だったようです。

それでも、往時の絢爛さを復活させるためか、見るに見かねたキリエが、なにやらお掃除を始めるようです。

 

でも、一つ勘違いして欲しくないのは、何も彼女が・・・彼女自身の手に、ハタキ・ホウキ・チリトリの類を持ってするということではないということ。

では、どうしてこのススだらけのところを綺麗にするというのでしょう――――?

 

それは・・・キリエ自身がこの部屋、ほぼ中央に来たとき――― そして、彼女自身の『言の葉』によって出てきた、或る物体に対し、

自分達、官がよく昔使っていた『言の葉』を用いる事で、そこは当時の色を取り戻し始めたのです。〕

 

 

キ:―――来たれ・・・

 

乃:あ・・・っ、でまちたみぅ。

コ:(カレイド・クレスト・・・・。)

 

キ:―――光よ甦り、そして、我が言の葉に耳を傾け給え・・・

 

 

〔それこそは彼女が唯一・・・・いえ、当時の官吏を目指す者ならば、最低限は覚えておかなければならない『言の葉』だったのです。

そして、その言の葉の一つにより、このススけた場所は、見違えるように綺麗になったのです。〕

 

 

コ:わぁぁ〜〜――――っ! すぐに綺麗になったみゅ!!

乃:うんっ・・・・・♪

 

キ:(ウフフ・・・)さ・て―――それでは早速この宝珠に、これまでの経緯(いきさつ)のご報告を・・・・

  ―――我は皇の臣、左軍中郎将・左将軍・・・名を、キリエ=クォシム=アグリシャスと申す。

  真の皇に、畏(かしこ)みをもって申し上げる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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