≪二節;icon―――消えた偶像≫
〔そんなことよりも、アヱカは何を求めて礼拝堂に・・・?
それに、アヱカが求めていた何かは、どうして礼拝堂にはなかったのか。
その疑問を解くため、気を失わせた者に再び気を入れ、質問をしてみたのです。〕
婀:むんっ―――!
警:うぅっ・・・う・う―――
ア:手荒なことをして申し訳ない―――
警:お・・・お前たちは? 何者だ―――
ア:そのことを、今ここで話すわけにはいかない。
けれども私の質問には答えてもらいたいのです。
どうして・・・ここにはないのです?
警:な・・・なんだと? 何を云っているんだ―――お前・・・
婀:素直に答えればよい。
さすれば痛い思いをせずに済む。
ア:これ―――・・・
なにも私たちは、あなたを脅そうと云うのではありません。
けれど・・・私は知りたいのです。
この建物は、本来はサライにおいて―――いや、あなた達の信教マハトマにおいて、大変重要な位置を占める施設のはず・・・
なのになぜ、あなた達の信教の創設者 ミトラ の像が安置されていないのです―――
〔アヱカが質したことのそれ―――とは、マハトマ教の創設者の偶像が、この建物に安置されていなかったことについて・・・なのでした。
そして―――そう・・・これが今回の、アヱカの真の目的・・・
ではなぜ、他国の信教の祖の偶像に、自分はもとより婀陀那にも会わせようとしていたのか・・・
本当に驚くべきは、彼女たち三様が対面した時に始まるのです。
ともあれ、警備の当直の人間は、アヱカのこの質問に、こう回答(こた)えざるをえませんでした。〕
警:ミ・・・ミトラ様の像ならば―――まだ旧礼拝堂に安置されています・・・
ア:旧礼拝堂―――?
警:は・・・はい―――このお堂は、100年ほど前に新しく建造されたばかりで・・・
まあ、尤も―――ミトラ様の像をこちらに移動させようにも、人足に不幸が起こったり・・・など、よくないことか続いていたので・・・
ならば、旧いお堂にそのままにさせておこう―――と・・・
しかし―――それにしても、なぜ・・・
近頃の信徒でさえ、ミトラ様の像のことはあまり良く知られていないのに・・・
ア:そう云う事だったのか・・・いや、よく判ったよ、ありがとう。
ならばもう一つ・・・その、旧礼拝堂の位置は―――?
〔旧礼拝堂―――恐らく築年数がかなり経ち過ぎているため、建物自体が老朽化してしまい、
それならば・・・と、云うことで、サライは新礼拝堂の建造に着手したものと思われました。
それにおそらくは、当初の計画としてあったように、マハトマの創設者であるミトラの像も、新礼拝堂完成直後に移送する手筈となっていた・・・
―――はず、だったのですが・・・
いざ移動させるとなると、途端に人足達に災いが降りかかり、中々作業が進まずにいたのです。
このことを重要視したマハトマの評議会は、ミトラからの警告である―――との見解を示し、
元々の設置位置である旧礼拝堂に安置しておくことを決定したのです。
しかし・・・近年においては、最早ミトラの名は形骸化し、若年層の信徒の間ではその存在すら忘れられていたのです。
そのことにアヱカは、一つの団体を興した本人が、現在では言の葉に残る事さえない―――
そんな侘しい事実があったのかと思うと、少し胸が痛くなったものでした。〕