≪三節;心情の吐露≫
〔その後―――タケルは、丞相として大将軍の婀陀那や録尚書事のイセリア達と意見の交換をし合い、
その二年間で、自分たちが動かせる国政が向かう方向性を決め、カルマとの決戦に備えさせたのです。
そして―――この度行われた作戦会議や会合などの決定事項を、パライソ国の女皇であるアヱカに伝えるため、
タケルが女皇の部屋を訪れた時にはその日の夕刻となっていました。
その女皇の部屋の扉の前にて、護衛を司る近衛の二人の承認を得、アヱカと対面を果たしたタケルは・・・〕
タ:―――アヱカ様、此度の話し合いの結果を、ご報告に上がりました。
ア:ご苦労だった・・・
それにしても二年―――最低でも二年の間は、殺し合いをしなくても済むんだな・・・。
北のクーナ・・・そこの平定を終えて、気勢の上がる者達をよく抑えてくれた。
本当に・・・ご苦労だった―――タケル。
〔今回の作戦会議で取り決められたこととは、これから先、二年間は軍事行動を起こさないと云う事。
それは―――カルマへ攻め込む姿勢を見せるのは勿論のこと、喩えカルマから攻め込まれたとしても、
余程のことでない限りは、守っている城や塞から撃って出ることを禁ずることを意味していたのです。
そのことを女皇は―――・・・
いえ、今となっては、上層部のごく限られた人間には、知られた存在となってしまった女禍にしてみれば、
二年・・・僅かと云えども二年の間だけは、自身が最も忌み嫌う・・・一番醜いとさえ思う行為を、
知らずに済む―――
見ずに済む―――
聞かずに済む―――
そんな捉え方をしていたのです。
すると・・・そんな女禍からの言葉を、彼自身なりの解釈で捉えたタケルは。〕
タ:女禍様―――あなた様が、敵であるカルマの兵をも心配なされる・・・その慈愛の心でさえも、
彼の者たちの知れる処ではなく、いづれはパライソが擁する兵士だけではなく、関係のない民たちにまで被害は及びましょう。
ですが、そこをあなた様は見て見ぬ振りが出来ぬのですから、いづれは民たちの為に立ちあがっていたと思うのです。
要は、それが早いか―――遅いか―――今日か・・・明日かの、話しなのです。
女:そんなことは判っている・・・。
もう、何十万年も、何百万年も前から・・・
フ・フッ―――・・・それにしても皮肉なモノだ。
遙かな過去に姉さんから云われていたことが、時を隔てた君の口から・・・そのまま聞けようなんてね。
〔敵対している相手でさえも慈しむ―――そんな慈愛の精神は、判る・・・判るにしても、そんな気持ちごと蹂躙(ふみにじれ)る者を両者は理解していました。
だから・・・理解していたから尚の事、軽々しい判断は禁物としていたのです。
それに・・・今の寵臣からの一言―――
この一押しのお陰で、ようやく目の前にかかっていた靄が切り払われ、女皇も大英断を下せるに至ったのです。〕