≪五節;アラケス、ビューネイの真意を訊ぬう≫
〔何とか一つの難局を収め、部屋を退出しようとした時・・・ふいに同僚から呼び止められた―――
そのことを、もしかすると自分の芝居が見破られたのでは・・・と、緊張をしたものだったのですが、
彼―――アラケスから切り出してきた話題が、殊の外矮小だとベェンダーは思いました。
それと云うのも―――・・・〕
ア:なぁビューネイ・・・貴様はどうかしてしまったのではないか。
ビ:どうか―――とは?
ア:惚けるでない!
以前の貴様ならば、彼奴等の取る策など取るに足らんことよと、さらに彼奴等の上を行く策で翻弄してきたではないか!
それを・・・どうしたことだ―――今更になって、処女の如く怯えるとは。
ビ:私を・・・乙女―――だと?
確かに、ここ最近私がとる方針は、貴公らから見れば消極的に見えるだろう。
だが・・・私が取っているのは、あくまで慎重論であり―――消極論では決してないのだ。
それの証拠に・・・先ほどの席では、未だ確定材料がなかったものでね、出したものかどうか迷ったものだが―――
ア:ぬッ―――? これは・・・
〔アラケスがビューネイを呼び止めた理由―――それこそは、以前のような積極性を欠いた者に対しての疑惑でした。
そのことを、自分が心配していたこととは違っていたことで安堵をしたベェンダーでしたが、このまま疑われたままで―――と、云うのは本心ではないので、
一つの餌を目の前にちらつかせてみたのです。
それが・・・二大要塞の一つマディアノの近くで、建設が予定―――と、囁かれつつあるパライソ側の砦の情報なのでした。
しかも、ビューネイが掴んでいたモノの、今日の席で公表しなかった―――と、云うのが、
そう云った情報が流れつつあるという初期の段階であり、ひょっとしてそれは本当はそうではないかもしれない・・・
つまり、そう云う類の情報がカルマの将の耳に届けば、面白かろうはずはなく・・・この情報の源となっている件の砦を襲うべしとなるだろう。
けれど―――実際に行ってみればそこは更地であり、砦を建設すると云うのは噂でしかなかった・・・
そこで出てくるのが出撃にかかる経費―――しかもそれが、一度や二度ならまだしも・・・回数を重ねてしまえばどうなるだろう。
今となっては、無限に蓄えられていた食糧庫であるクーナは敵方に渡っており、
今度からは、こちら側がそう云った心配をしなくてはならない。
そう云った説明を、その情報と共に受けたアラケスは、今回のことは慎重論を唱えるビューネイに賛同し、
ビューネイもまた、危うく虎口を逃れたのでした。〕