<第百三十六章;大尉、砂と戯れる>
≪一節;変化≫
〔自分が最前線に赴くようになった理由と、作戦会議の時に公言してしまい、そのことによって諸将たちを警戒させてしまった・・・
その誤解を解くのにキリエは苦慮したものでした。
別段誤解を与えさせるつもりではない・・・だけど、自分のことを知られてしまった以上は真実を伝えないと―――
しかし、今回の様に伝えどころが悪かったりすると、相手にひどく警戒させてしまう処となり、
キリエは自分の説明力のなさを、殊更痛感してしまったモノだったのです。
ともあれ、北方にある敵国、カルマに攻め入るには、元ラージャの王都の城でもあるワコウの攻略は、その足掛かりとしても重要であり、
ここで躓いてしまうようならば、先が思いやられてしまうのです。
一方―――守勢であるカルマは、この城を護る将に、魔将筆頭の副将を据え置くなどをして、
見るからに態勢は万全であるかのように思われたのですが・・・
実は、今回ワコウを預かる事となったバルバリシアは、すでにある者達によって調略にかかっていたのでした。
そう・・・自らの存在を偽り、カルマを滅亡の道へと導くために、敢えてその国に参じた者達―――「埋伏の毒」によって・・・〕
バ:(フ・・・私のような者に、このような大役をお任せになられるとは―――
ここは、せいぜい派手にやられなくては・・・な―――
それにしても、何とも深い謀なのだ。
この私が倒され、この城を取られることになろうとも―――まあ、それが前提なのではあるが・・・
ここでいとも簡単に敗れるようであっては、今までに積み重ねてきたことが総て無駄になってしまう。
だから、程度の抵抗は試みないとな。)
〔今回パライソ軍を迎え撃つことになったバルバリシアは、元はと云えば七魔将筆頭であるビューネイの副将でした。
しかも彼は、過去にもヱリヤやエルム―――キリエやサヤ達と幾度も刃を交え、戦乱を長引かせてきた張本人の一人であるともされていたのです。
その実、現在でも彼が、彼の者達からの調略を受けずに以前のままだったら―――
ヱリヤやキリエが苦戦を強いられるのは必定となり、手痛い反撃も被っていたところだったでしょう・・・
ですが・・・しかし―――
現実には、彼は「死せる賢者」からの調略によって使命を書き換えられ、
普(あまね)くカルマを滅亡の道に導く使途へと変わり果ててしまっていたのです。〕