≪四節;カルマの対応≫

 

 

〔このことを―――遠く、カルマのコキュートスで把握していた者たちは・・・〕

 

 

ガ:―――デルフィーネ・・・

ジ:なんでしょう・・・お姉さま―――

 

ガ:どうやらカイン殿が、世情の異変を感じ取ってお前のクルーザーに入ったみたいだよ。

ジ:ハーヴェリウス―――ですか・・・

  ですが、彼ならば心配ない―――と、思っていらっしゃるのでは・・・?

 

ガ:ああ―――おそらく彼は、「異状は見られなかった」と、周囲には触れこむだろう。

  なにしろ真相を知っているのは彼とその一派のみ、だものね。

  もしあそこが噂通り、何者かに踏破されていたと知られでもしたら、おそらく二大要塞を攻略するのにも時間を割かなくてはいけなくなる・・・。

ジ:そうすれば自ずと―――・・・フフフ、判っていますよ。

  それでは、各布陣を決めますゆえ、私はこれで・・・

 

 

〔カインの賢さ―――それは、情報の有用性を理解していたと云うこと。

現在自分が有している真実を、その総てを公表すると云うのではなく、自勢力に不都合だと思われるモノに関しては、出来る限り表沙汰にはしなかった・・・

今回では「北のドルメンが何者かに暴かれ、人々に安寧を齎(もたら)せていた宝珠が紛失してしまった」―――

これ程、民衆に与える不安材料はなく、もしかすると今回の士気にも係わるかもしれない・・・

それ程一つの情報の重要度と云うものを理解していたのです。

 

そこのところを―――カインと云う人物を高く評価していた「死せる賢者」と「マエストロ」は、

自分たちの計画に一部修正を加えるため、別行動をとったのです。

 

 

それから数時間後―――

侵攻してくるパライソ軍を迎え撃つための各布陣を、作戦会議にて発表するマエストロは・・・〕

 

 

ジ:これより―――パライソ軍を迎撃、並びに殲滅させるための各布陣を発表いたします。

  まづ、幽谷道からの抑えとして―――ジュデッカの守りに・・・アウナス!

 

ア:フン―――得心がいかんな・・・

  なぜワコウが陥落するという前提でモノを云っている。

ジ:ここの処の、パライソ軍の勢いを知らないはずはない―――と、思いましたが・・・

 

ア:それにしても―――だ!! 我々があのような脆弱な軍に敗れるとでも思っているのか!

ジ:脆弱とは雖(いえど)も・・・勢いと云うのも強(あなが)ち莫迦にはなりません。

  現実として、屈強を誇った魔将の何人かが討ち死になされたのは、最早見逃せないところなのでは・・・。

 

ア:黙れぇい―――!! それ以上余計なことを抜かしおると・・・

 

サ:待て―――アウナス・・・

ア:し―――しかし、閣下!

 

サ:確かに、吾の昔日からの同胞が消え逝くのは見逃せぬところ―――ではあるが・・・

  ではマエストロよ、要衝に魔将を据え置くと云うのは・・・

 

ジ:お察しの通り―――彼の者達を、その地で殲滅させるためにございます。

  ゆえに・・・もう一つのマディアノには―――ベリウス。

 

べ:大王閣下のお考えがそうであるとは気付きませんでしたな。

  そう云う事なれば大人しく従いましょう・・・。

  して―――貴殿やビューネイ殿は、どこを護るので・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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