<第百三十八章;宿縁の終焉(おわ)り>
≪一節;「難攻不落」の謂れ≫
〔大尉・驃騎将軍が謀ったことが功を奏し、砂時計が1/3落ちた処で、ワコウの守将・バルバリシアの馘を持った左将軍・キリエが、パライソ軍本陣まで帰還しました。
そして、馘実験も終わったところで、早急にワコウ城を接収した彼らは・・・〕
コ:さすがに・・・世にて「蒼竜の騎士」と畏れられた御仁にござる・・・。
チ:うむ・・・こうも容易くここを陥落(おと)すのですからな―――
紫:ですが、これでジュデッカ攻略の足がかりが出来ました。
これからは、あの要塞をいかに陥落(おと)すかにかかってくるのですが・・・
〔なまじ―――古い文献で知っているだけに、カルマが擁する最終防衛線・・・「ジュデッカ」と「マディアノ」の攻略が、どれだけ難しいかを各将は知っていました。
しかも・・・ワコウを攻略するのに、どれだけ手間取らされたか知れないのに。
だから、参考として過去にこの二大要塞を攻略したことのある二人、ヱリヤとキリエに意見を伺ってみると・・・〕
ヱ:聞かなかった方が―――良かったと思うぞ・・・
紫:そ、そんな―――・・・
〔あの二つの要塞が「難攻不落」と定義されている特徴―――
それは、「自立排除機構」<オートファージ・システム>を常に作動させており、不審な物体だ―――と、そのシステムが判断・認識すれば、
立ち待ちレーダーで捕捉し、「粒子加速砲」―――いわゆる処のレーザーで跡形もなく消去させてしまう・・・
しかも、上空からの侵入に対しても手抜かりはなく、過去に―――この度ヱリヤがワコウに対して繰り出した「下り飛竜」をもってしても・・・〕
ヱ:あと少し―――と、云う処でな・・・いや、あれはいい教訓になった。
紫:それでは・・・どうやって―――
エ:いやさ〜〜それがねぇ、どうしたことか急に退き始めてね・・・。
紫:エルム様?いつのまに―――・・・
エ:いいの〜いいの〜〜そんな細かい事は♪
それより―――来る時が来ちまったようだね。
ヱ:そうだな・・・それに、なるべく犠牲は少ない方がいい―――
紫:な―――なにを仰られておられるのですか? 意味が判りません!
〔地上だけではなく、上空に対してもレーダーの網を張っており、超高速で上空から突撃をかけてくるハイランダーの「下り飛竜」に対しても、準備は万全だった・・・
そのことを当時のヱリヤは知らずにおり、オートファージ・システムの格好の餌食となってしまい、危うくシャクラディア軍は大幅に士気を下げてしまうところだったのです。
・・・だとしたら―――?
どうして過去の文献には、二大要塞が陥落ち―――カルマの本拠であるコキュートス城も陥落せることが出来たのか・・・
そこで、いつからそこにいたのか・・・車騎将軍であるエルムが一言―――
当時の自分達でも不思議と思えるくらい、なぜか・・・優位に戦局を展開していたにも拘わらず―――突然の放棄・・・
これにより、主不在となった二大要塞は、苦もなくシャクラディア軍の軍門に下り、やがてはコキュートス城も同様に・・・
しかし―――後に、事の原因究明をした結果、それこそがサウロンの仕掛けた計略でもあった・・・と、云うことだったのです。〕