<第十四章;アヱカ姫の看護>

 

≪一節;解けた疑問≫

 

 

〔紆余曲折ありながらも、自らの心情を吐露し、相互の理解を得ることが出来た女禍様とアヱカ姫の両名。

 

そして、互いに一つになることで、氷解したある出来事が頭を持ち上げてきたのです。〕

 

 

ア:(ふ・・・う)・・・・あの、キリエさん―――

キ:あ・・・は、はい。

 

ア:ひょっとして―――あの時、あなたのお店でわたくしが品物を落としてしまったとき、あなたの態度が急変してしまったのは・・・

キ:・・・はい、その通りでございます。

  私の身体の一部から作り出された「あれ」は、人間達の免疫力を高める事と、他の魔物から人間達を護るという効力があるのです。

 

ア:まぁ・・・そうなんですか、それと、何ですって? あなたの・・・身体の一部??

キ:はい、それともう一つ・・・七万年前より、丞相閣下から施された『輪廻転生』の秘術により、

  大体この時代に、女禍様の魂を宿せる方がお生まれになる・・・その事の見極めを行うためにも、私の「鱗」が使用されたのです。

 

ア:えっ?? う、鱗?? でも・・・あなたは―――

 

=はは・・・これキリエ、意地悪していないで、見せてあげなさい。=

 

キ:はっ―――かしこまりました・・・。

 

ア:えっ?えええ???

女:<いいかい、アヱカ・・・驚かずによく見ておくんだよ・・・>

 

 

〔アヱカはあの時・・・キリエのお店で、その売り物を不意に落としてしまっても、咎められなかったことや、

今の説明がなされた中でも、最も興味を引いた「キリエの身体の一部」―――「鱗」の意味を・・・

この時、この場所で知る事となったのです。

 

なぜならば―――

 

キリエの影から、突如として這い出たある存在・・・・

―――青緑色の体色をした竜に、その身を臍まで同化させた者・・・『竜眷属』<ハイランダー>

が、そこにいたのだから・・・。〕

 

 

ア:(は・・・ぁあ・・・)キ・・・キリエさん?? これは・・・一体?!!

女:<驚いたかい、アヱカ。>

 

ア:は・・・はい、でも・・・こんな方でも女禍様の臣下だった―――ということは・・・

女:<はは―――それはちょっと違うね。

  「だった」じゃなくて、この子は今でも私の臣下なんだよ、アヱカ。>

 

ア:えっ?!そうなんですか??

女:<うん・・・あ、そうそう、実はこの子達も・・・>

 

コ:はぁ〜〜い、アタシもですみゅ!

乃:あたちもですみぅ。

 

ア:そう・・・あなた達も・・・(あ・・・)キリエさん。

 

キ:申し訳ございません。

  どうやら今のこの私の姿を見て、驚かれたようですね。

 

  ですが、こうでもしない限りは、人間達の中にいる・・・今はアヱカ様と言う存在を、伺い知る事が出来なかったので・・・。

 

ア:そうだったのですか・・・それにしても、姿形が違うだけで驚いてしまって・・・こちらこそ申し訳ありません。

 

キ:いえ・・・アヱカ様が気になさる事ではありませんよ。

  それでは、これからはこの私めが、アヱカ様と言う存在をお護りいたしますので、よろしくお願いいたします。

 

ア:はい、それではこちらこそ―――

 

 

〔そして、ここで改めて臣下の礼をとり、アヱカ姫の新たな護衛役第一号となった者・・・それがキリエだったのです。

 

 

それから三人は、都・ウェオブリに戻り・・・〕

 

 

ア:あの・・・キリエさん、またその・・・お婆さんの姿にならなくても・・・

キ:いえいえ、これでよいのですよ、アヱカ様・・・。

  私もこんな姿になって判ったのですが、若い姿よりこう云った年寄りの姿のほうが、相手のほうから油断してくれる事が多くて、都合がいいときがありますので・・・。

 

ア:そうでしたか―――あっ、セキ様・・・。

 

セ:これはどうも、ところでそのご老体と一緒ということは――――

キ:はい、ただ広い遺跡の中で迷っちまいましてねぇ。

  おまけに小さいこの子達ともはぐれちまって・・・イヤイヤ、この人が来てくれたお蔭で助かりましたよ。

 

  尤(もっと)もその所為で、この人のお邪魔をしてしまうことになるなんて・・・年は無駄に喰うもんじゃあないですねぇ。

 

セ:はあ・・・そうですな。

  ところで、アヱカ様―――お時間がございましたら、少々よろしいですかな?

 

ア:え?あ・・・はい、それでは・・・この子達をお部屋に連れて行っておきますので・・・

セ:そうですか・・・分かりました、それではここでしばらく待つことにいたしましょう。

 

ア:有り難うございます、それでは・・・・キリエさん―――

キ:ハイハイ―――分かっておりますですよ・・・。

 

 

〔この時、またしてもキリエは老婆の姿になり、スピリッツの二人・・・コみゅ・乃亜までも幼な児の形態になっていたのです。

 

しかし、それこそは『擬態』というものであり、敢えて「年寄り」などの姿を模するというのも、

他からの目を逸らせる―――いうなれば警戒されないような・・・そういうものだったのです。

 

 

そしてしばらくすると、侍中の一人であるセキに逢い、諸事情を話しておき、理解を得たあと・・・

どうやらこの忠臣は、アヱカ姫に何用かあったようですが――――〕

 

 

 

 

 

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