<第百四十章;最終防衛線>
≪一節;深まる疑問≫
〔カルマの最終防衛線の一つであるジュデッカは、西側諸勢力の尽力によってここに陥落しました。
けれどヱリヤは・・・捕虜にしたカルマ兵からの一言で、気が気ではなくなっていたのです。
譬えどんな手段・理由により蘇ったとは云え、敵勢力に加担した母が―――なぜ中央制御室に、守将であるアラケスと一緒におらず、
未だ過去の敗残者の血糊がこびりつく地下闘技場(コロシアム)にいると云うのか・・・
いや・・・もしかすると母は―――
ヱリヤは、淡い期待と不安とを胸にコロシアムまで急ぐのでした。
するとそこには―――・・・
かつては予定調和の証としてその神聖性を認められていた、種族(ハイランダー)の至宝の変わり果てた姿が・・・
悪しき意思に屈し、その輝きでさえも失い―――長柄も手折られたままで地面に突き立てられて、なにやら寂しげに佇んでいたのです。
それにしても、持ち主であるアラケスの姿は・・・なぜかその場には確認されなかったのです。
そう―――屍体でさえも・・・
そのことにヱリヤは、悪業の限りを尽くしてきたが故に、終(つい)にはベルクラントに取り込まれたものか・・・と、推察しては見たのですが―――〕
ヱ:(いや―――それでは硬度を誇るこの槍の長柄が折られている証にはならない・・・。
ならば―――だとすれば、なぜ奴の屍体がない? いや・・・それ以前に、ママーシャはどこに行ったと云うのだ?!)
〔自身が知る内でも指折りの硬度を持つことを知っていたヱリヤは、だとしたらどうして槍の長柄が折られていたのか・・・説明がつきませんでした。
それに、宿願とも云える怨敵を討ち果たしたとしても、娘である自分と喜びを分かち合おうとはせず・・・
行方を眩ませた母にヱリヤは、大いなる疑問を抱かざるを得なかったのです。〕