≪三節;疑惑の援軍≫
〔それはそうと―――この要塞を護る、魔将べリアスは・・・〕
べ:え・・・ええい〜―――何事だ! 一体何があったと云うのだ!!
〔正体不明―――解析不能の光弾により、要塞自体が軋み、揺らいだ・・・
その原因解明を要求するのですが、よもやそれがパライソ側でさえも知らなかった存在によってなされてしまった行為だけに、
なにも知らない彼らが上官の問いに答えられようはずもなく・・・
ただ―――密かに、この要塞へと救援に駆けつけていた存在にしてみれば、そうではなかったみたいで・・・〕
ジ:ふぅ〜ん―――中々、物騒なモノを所持していたみたいねぇ〜あの子たち・・・。
べ:なに? マエストロ―――貴様いつの間に・・・
いや、それにしてもどうしてここへ―――・・・
ジ:―――どうでもいいじゃない・・・そんなこと。
どうせあんたは、これから死んでしまうのだから・・・
〔なんとも・・・耳を疑いたくなるような発言―――
マディアノに、救援に駆け付けたかと思われた黒き宰相ジィルガは、自分がここに来た理由は、魔将べリアスの抹殺―――と、そう宣下したのですから。
そのことに、思いのほか驚く魔将―――か・・・と、思いきや。〕
べ:フフフ・・・やはりな―――そうではないかと思っていたわ。
だが、功を焦り過ぎたようだな、マエストロ! 未だこことコキュートスとの回線は生きたままなのだぞ!
〔やはり・・・と、云うべきか、べリアスもアラケスと同様に、この度自分達の仲間になったと云っていた者達のことを、そう簡単に信用していたようではありませんでした。
そして・・・この不信感は一気に核心へ―――
このほどジィルガが、うっかり口を滑らせてしまったことを、至急コキュートスに送信したのです。
これによって、ジィルガが企てた策謀は、自らを窮地に追い立たせてしまう結果・・・に、なるものと思いきや―――
彼女は平然としたままでたじろぐこともなく、どちらかと云えば余裕すら見せるように―――・・・〕
ジ:フフフ・・・判っていない様ね―――べリアス。
ならばどうして私が、あんたの眼の前で自分が不利になるようなことを云わなければならないのかしら。
この私の・・・命すら危うくなる、大事なことを―――・・・
べ:むん? むぅ・・・云われてみれば―――
ジ:そこであんたは、こう思い始める・・・。
私がこんなことを云ってしまえる背景には、本当は・・・仲間の魔将達は、いなくなってしまったのではないか―――と・・・
それに丁度・・・ジュデッカでは、アラケスが―――
べ:な、なんだと? そん―――
ジ:そしてお前は、「そんな莫迦な、アラケスの旦那に限って」・・・と、云う―――
べ:そんな莫迦な!アラケスの旦・・・―――ッハアアッ!!
ジ:・・・いつまでも私たちが、張られた頬の痛みを忘れているとは思わないことね―――
それに・・・お前達はもう、終わっているのよ・・・
〔なぜ、重要な策謀の中身を、その人物は敵の前で広言できたのか―――
その理由の一つには、最早隠す必要などなくなったから・・・
しかも、べリアス自身でも尊敬している「三傑」の一人、アラケスも今となっては―――・・・
その吹聴を、自分を混乱させるための流言の類いだと、べリアスはきっぱりと云い切ろうとするのですが、
ジィルガはまた、巧みな話術を持ってべリアスを自分の術中に誘(いざな)い入れたのです。〕