≪二節;血染めの標(しるし)

 

 

〔それからしばらくして―――要塞の要所を制圧し終えたパライソ軍は、最後の仕上げに・・・と、残されている指令室と思わしき部屋に踏み入ってみれば・・・〕

 

 

リ:いくわよっ―――せぇ〜のっ! ・・・って、うわわっ!

セ:ここを護っているはずのべリアスの姿が見えない―――代わりに・・・

イ:恐らく・・・彼本人の血なのでしょうね。

  捕虜一人をここに―――この状況を説明させて。

 

 

〔べリアスがいるはずの指令室は、誰のモノとも云えない血によって充たされていました。

しかし肝心のべリアスの姿はなく、この血が彼のモノだと容易に判断できたのです。

 

そこでイセリアは、もう少し現況について詳しく知っておく必要がある―――と、捕虜の一人に検分させるようですが・・・

この捕虜も、まさか自分達の要塞内部で、こんなことが起きていたモノとは知らなかったので、初めの内は驚いていた様子でしたが、

(おもむろ)にある事を―――・・・

 

そう―――マディアノ陥落を防ぐため、援軍となって馳せ参じてきた「黒き宰相」のことと、

その人物とべリアスが、つい最近この部屋に入ったことを証言したのです。

 

その証言により、イセリアは・・・カルマ内部に不和の亀裂が生じ始めているのでは―――と、憶測してみるのですが、

如何(いかん)せん判断材料の乏しいままでは危険性を伴っているので、今の内は頭の片隅に入れておくだけにしておいたのです。

 

それからまたしばらくして、「丞相」「大将軍」「北部総督」が揃って入場し、

ここに「マディアノ」「ジュデッカ」は、完全にパライソの軍門に降ってしまったのです。

 

しかしこの後―――展開は思ってもいない方向に・・・

それは、丞相タケルが、マディアノ制圧と共に指令室に入った時から・・・なのでした。

 

聡明な彼が違和を感じたのは―――この部屋に入った途端・・・でした。

それは、魔将べリアスの血によって朱に染められた、現場そのものに―――ではなく・・・

べリアスの血と共に、その部屋にあったモノ―――・・・

しかもそれは、「モノ」などではなく・・・べリアスの血で描かれた―――・・・〕

 

 

タ:ぬうっ! こ・・・これは―――・・・

婀:いかがなされましたか、あなた。

 

タ:・・・この部屋に、最初に入ったのは誰か―――

リ:あ・・・はい、私―――と・・・

セ:私と・・・

イ:私ですが―――何か・・・?

 

タ:そうでしたか・・・では、この部屋の状況を、誰に訊かれても話したりはしてはなりませんぞ。

イ:それは承りましたが・・・ならば理由を。

 

タ:それをするには、今しばらくの時間をいただきたい。

  それから―――急いでジュデッカにいるノブシゲをここへ・・・

  イセリア殿、はっきりしたことはそれからです。

 

 

〔イセリアも、この部屋に踏み込んだ時から、この部屋の状況は普通ではないと感じていました。

そう・・・普通に闘い合った場合なら、そこにあるのは血の海だけ―――

この部屋のように、誰かが被害者の血によって何らかの標(しるし)を描いたりはしない・・・

 

何かの標(しるし)―――・・・

 

そう、何かの標(しるし)なのだ・・・これは―――

それに、こんなにもタケルが動揺するのも珍しい―――

そこに、この部屋に隠された謎を解明する鍵があるのかもしれない―――

 

だからイセリアは、タケルから云われた通りに、現在はジュデッカにいるノブシゲを呼ぶ伝令を走らせたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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