≪三節;解明された謎と、浮上した謎≫
〔一方その頃・・・パライソ皇城・シャクラディアの一室―――女皇の執務室内では・・・〕
ル:(愈々ここでの決戦も大詰め―――だからナオミのプログラムの一部を解除したけれど・・・巧くやってくれたかしら。)
〔執務室内で念じ祈りあげていたのは、女皇アヱカ本人―――ではなく、影武者のルリなのでした。
それにしても、彼女は気になる一言を・・・
それも、この度の二大要塞攻略に際し、非常に関わったことのある、ある人物に対して―――なのでした。
しかしそのある人物・・・ナオミは、そのお話しの内(なか)で自らが明かしたように、人間―――ではなく・・・
限りなくそれを模した、精巧な人形・・・
それも、或る機構をして自走する、殺戮兵器―――
それに、マディアノの堅固な扉に作用させたのも、某(なにがし)かの意思が働いたから―――・・・
ならば、今のルリの思考は何を意味するのか―――・・・
するとこの時、何者かが女皇執務室に入ってきた気配がしたので、そちらを向くと―――・・・〕
ル:―――誰? ・・・あっ!陛下―――
〔その人物とは、紛れもなくパライソの統治者である・・・女皇アヱカでした。
しかしそこで、ルリは極度に緊張してしまったのです。
けれどアヱカは・・・そんな態度を取るルリに対しても、なんら咎めることなく―――〕
ア:無事・・・帰ってくるといいですね。
ル:あ・・・は、はい―――
〔この時ルリが着いていた机上には、解除のためのパスワードを送信したばかりの、何かの端末らしき機器がありました。
しかも、慌てていたので、強制終了もできないままでいたのです。
それを・・・その様子を―――アヱカに見られてしまった・・・?
いや、ひょっとすると、今までの作業工程の一部始終を、見られていたのかもしれない・・・
そう疑われられなくもない―――アヱカ登場のタイミング・・・
ルリの身体に、緊張のための汗が、伝っていました・・・
けれどアヱカは、そんな機器を目にしたとしても、別段気にするところもなく―――
ただ、カルマ本国に攻め入った者たち全員の安堵と、無事の帰還を願う言葉を口にしたのです。
けれど・・・最後に、この部屋から退室する間際に―――〕
ア:ルリさん・・・今は自我を抑えるところです。
今回の事は、わたくしが目にする前と云う事で、大目には見ましょう―――
ですが、これだけは云わせて頂きます・・・「ありがとう」―――
〔女皇陛下は、何も知らない振りをして―――何もかもを知っていたのだ・・・
ルリは、今のアエカの言動の総てで、そのことを理解しました。
なにも、知っていることを総てひけらかすのが本当の智者ではない―――
然るべき時に、知識を活用・・・発揮できるのが本当の智者―――
ただ、アヱカにはタケルと云う頭脳(ブレーン)がついており、滅多と彼女の学識は見られることなどなかったのですが・・・
今の、この部屋にある現状を伺っただけで、自分の正体を見抜かれてしまった―――ルリはそう感じざるを得なかったのです。〕