<第百四十五章;カルマ滅亡への序曲>

 

≪一節;敵の本拠を見据え・・・≫

 

 

〔難航すると思われていた二大要塞の攻略も、終わってみれば少ない犠牲と消耗で済んだことは、

軍を運営する立場の人間からしてみれば、これ程僥倖と云えた事はありませんでした。

 

けれど・・・彼らからしてみれば、これからが本番―――

カルマ国の本拠、「コキュートス城」―――・・・

 

歴史を紐解く上でも、類を見ない難攻不落の堅城に、どう挑むのか・・・

時間を、あまりかけてはいられない・・・

 

折角、二大要塞を陥落(おと)せたと云うのに、ここで間隔を空けてしまっては、士気を落としてしまう要因にもなりかねない―――

その為、消耗した分の補給をし終えると、兵の休息もそこそこに、さらに北へ―――と、進軍を続けたのです。

 

そして眼前に巨大な城塞を収めると、元帥は各諸将を招集し、早速作戦会議を開くのでした。〕

 

 

タ:さて・・・愈々カルマ攻略も、最後にあの城を落とすのみ―――と、なったわけですが・・・いかがいたしましょうかな。

婀:ヱリヤ様にエルム様・・・過去にはどのように―――?

 

エ:攻略・・・って云ったってね、以前も云ったように―――あの時の奴らは、奴ら自身じゃなかったのサ。

  それに・・・「魔皇」として君臨しているサウロンてのは、七魔将の比じゃない―――その上、魔将筆頭のビューネイも残っていることだしね・・・

リ:そんな・・・それでは、マディアノとジュデッカを陥落(おと)したとしても―――

 

エ:リリアちゃん、そいつは自分達を過小評価し過ぎ―――ってなもんだ。

  私が云いたかったのは、コキュートス・・・更には、魔皇達を討つことが、そんなには容易(たやす)くない・・・って云いたかっただけなんだよ。

 

 

〔ようやく最後に残された課題―――敵の本拠を攻める・・・

それにしても過去には、苦戦の上陥落(おち)たとは云えども、それは全くもって自分達の実力(チカラ)で成し遂げた事ではなかった事を、

「古(いにし)えの名将」と讃えられた人物は、悔しさを滲ませながら体験談を語ったものでした。

 

けれどそれは飽くまでの「体験談」―――何も、万全の体制である現在(いま)・・・消極的にさせる必要など、どこにもないのです。

だからこそ、「万が一にでも自分達が敗(やぶ)れ北(さ)る・・・」そんな負の感情は、表立ってはいけなかったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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