≪二節;まるで少女のように≫
〔とは云え、決定的とも云える案が出ないまま、一日目の作戦会議は終わり、各々の天幕へと下がって行ったのです。
するとここで―――会議中でも、一言も口を開かなかったある将に・・・〕
ノ:ヱリヤ様、少しよろしいですか―――
ヱ:なんだ・・・ノブシゲ殿か―――
〔いつも以上に厳しい顔をし、固く閉じられていたヱリヤの口・・・
先程までの作戦会議でも、過去の戦の有り様を語っていたのは、ヱリヤとは同期であるエルムだったのです。
確かに・・・ヱリヤは普段でも口数の少ない人物―――
だから・・・とも思えなくもなかったのですが、ノブシゲはそのことを―――エルムがヱリヤの事を気遣って、
彼女になり替って語っていたのではなかったのかと思ったのです。
それに・・・折角ジュデッカを陥落(おと)したとしても、少しも嬉しそうな表情を浮かべない者に対し、ノブシゲの方も思う処ともなったのです。〕
ノ:何か気掛かりになっている事がおありでしたら、それがしに云って下され。
解決はできないまでも、少しばかりは気が晴れましょう・・・
〔その言葉に・・・途端―――
ヱリヤの・・・敵ですら怖じ、震え上がらせるほどの猛将の眸から、大粒の涕が・・・
そして、ヱリヤの内に溜まっていたモノが―――この時に、堰を切った様に流れ出てきたのです。
自分の母親が、敵として蘇り―――自分達の願いを阻もうとしている事・・・
過去に、大変お世話になった師ですらも、また―――敵の先兵として蘇っている事・・・
そんな方達に・・・果たして自分は、立ち向かえる事が出来るのか―――
それは悩み―――まるで・・・少女のような悩み・・・
こんなにも可愛げのある、少女の様な猛将を前に、ノブシゲは自分に纏(まつ)わる、或る事実を告白するのでした。〕