≪三節;タイラー家、略歴・・・≫

 

ノ:ヱリヤ様、実は・・・それがしは実の父を―――この手に掛けております。

ヱ:え・・・?

 

 

〔ノブシゲは・・・ノブシゲの家―――「タイラー」は、三代続いてのラージャを代表する忠臣の家柄でした。

 

キヨモリ―――ノブモリ―――ノブシゲ・・・

 

けれどノブシゲの父であるノブモリが、その野心から謀叛を興し―――

その彼を討つため、ノブモリの実の父であるキヨモリが実の息子と対峙をしたのです。

 

しかし当時―――まだ元服前だったノブシゲは参陣を認めては貰えず、ただ結果報告を聞くのみだったのですが・・・

結果としては最悪の報告―――ノブモリが実の父を返り討ちにした・・・

 

なぜ―――骨肉で争わなければいけないのか・・・

けれどそれは、ラージャならではの掟だったのです。

 

もし身内から謀叛人を出した場合は、当家の内々で処理をする―――

そこで謀叛人を討ち取れば、不祥は謀叛人のみの罪となり、当家にはお咎めなし―――

しかし・・・逆賊討伐に出た者が、謀叛人によって感化される―――また或いは、返り討ちに遭ってしまった場合・・・

その時は国を挙げての逆賊討伐―――無論これは、当家の「お家断絶」を意味していたのです。

 

そう、つまり・・・返り討ちに遭ってしまったからには、タイラー家は即日の下お取り潰しの憂き目に晒されてもいたのです。

 

けれど、そこで―――ノブモリを討つ役目を、今一度タイラーの人間に・・・つまりノブシゲに任せてはどうか―――と、意見した者がいたのです。

その者こそが、ノブシゲとは同期の桜であり、弱冠にして「老中主座」に就いていた・・・〕

 

 

ヱ:―――タケル殿が・・・

ノ:ええ・・・あいつには救って貰いました。

  云わば親父殿一人の不始末を、それがしに払わせることで・・・タイラーの家を潰さずに守ってくれたのです。

 

  ヱリヤ様―――こう云った事は、乱世であるこの世の中では必然に起こってしまう不条理でもあるのです。

  今後は・・・こう云った不条理の莫きよう―――だからこそ、それがしたちは上様の下に参じたのです。

 

 

〔ノブシゲのその一言に・・・ヱリヤは打ちのめされました。

 

この若者は、自分より短く生きていても、なんと多くの物事を見てきたのだろうか―――・・・

なのに自分は、この若者より長く生きて・・・何を躊躇(ためら)っているのか―――・・・

それに、女皇陛下からの忠告で、ある程度割りきれているものと思っていたのに―――・・・

 

だから、ノブシゲの諫言により、一切の煩悩を払ったヱリヤは・・・〕

 

 

ヱ:ありがとう・・・ノブシゲ殿―――お陰で私の頭の靄(もや)は切り払われたよ。

ノ:おお、それでは―――・・・

 

ヱ:うむ・・・この私達の征(ゆ)く手を阻もうとする者は、例え母とて容赦はしない!

ノ:そうでございますか・・・

  ならばこのノブシゲ、ヱリヤ様の覚悟の程・・・見届けさせて頂戴(いただ)く所存にございます。

 

 

〔ヱリヤの内にあった煩悩は、その一切を払った―――とはしていましたが・・・

実はそうではありませんでした。

 

けれど・・・今のノブシゲの体験談によって、ヱリヤの心の内にあった蟠(わだかま)りは、その一部を除き着実になくなって行ったのです。

 

そしてこれから・・・ヱリヤが実の母と対峙するに至り、彼の存在が重要な鍵ともなってくるのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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