≪五節;策に乗じて暁を得る≫
〔しかし―――このカインの、自己犠牲的な考え方は・・・既に彼の事を、軍事方面において有用な人材であると認識していた者達の判断を鈍らせたものでしたが・・・
逆にタケルは―――・・・〕
婀:何を莫迦なことを・・・そなたはもう、大切なパライソ軍の片翼として―――
タ:いや、待て婀娜那・・・その策、案外よいかもしれん。
イ:タケル殿・・・あなたまで―――
タ:イセリア殿も、勘違いをしてもらっては困ります。
何より、ワシもカイン殿の有用性はまだある・・・と、思っている人間の一人でありますので。
けれど・・・カイン殿の策を全否定しない―――と、云う事は・・・
その役目、我ら全員ですれば善きまでの事。
恐らく投降してきた兵達は、カルマが擁していた全兵力と見て間違いはないでしょう。
だとするなら・・・あの城に残っているのは、総大将であるサウロンと―――魔将筆頭のビューネイのみ・・・
ならば、雑兵如きを宛(あて)がわせず、最終戦に相応しく将同士で・・・と、云うのはいかがなものでしょうかな。
〔タケルは、様々な能力に精通していましたが、特に分析・解析力などは特化していました。
確かに・・・イセリアや婀娜那の指摘する危険性も、判るには判るのですが―――・・・
それは、カルマ全盛期―――七人いた魔将に、大軍団を築いていた頃の話し・・・
ところが今となっては、七人いた魔将は筆頭一人を残して全員が敗死をしており、
戦力とも云える兵の数自体も、脱走や敵前逃亡などで減らしつつある事を、タケルは知っていたのです。
だから、相手から誘ってくるような策略だとしても、最早大勢は覆せるものではないと判断し―――
今のこの時を逃してはならないとしたのです。
そこでタケルは、カインの策に乗ずる象(かたち)で、敵中の懐深く切り込む役目を、
北部総督府関係者だけに留まらず・・・パライソ軍の中核を担う自分達に置き換えようとしたのです。
しかも―――・・・〕
タ:それつきましては、今回の出撃―――誰でもよいと云うのではありません。
そう・・・特別な者達―――十本の聖剣を携えし者たち・・・「十聖剣」ではいかがでしょうかな。
イ:しかし―――それでは危険過ぎませんでしょうか。
タ:そうとも言い切れません。
それに、聖剣が創られたそもそもの経緯とは、「須(すべか)らく邪(よこしま)や魔を払うべし」にあると云います。
ならば―――此度のカルマ征伐は、格好の舞台とは云えませんかな。
〔タケルが描いた今回の主力とは―――十本の聖剣を所持している者達で構成されようとしていました。
けれどもイセリアは、伝承のみを信じて良いものかどうか―――と、その危険性を説くのですが、
タケルにしてみれば、そこの処に聖剣の利用価値を見出そうとしていたのです。〕