≪二節;喜べぬ勝利≫
〔交錯して、互いに背を向けあう両者に・・・勝負の行方を見守っていたエルムにノブシゲは、固唾を呑みこむのでしたが・・・
結果は―――・・・〕
ス:―――・・・フッ、強くなったな・・・ヱリヤ・・・
ヱ:(!!)―――ママーシャ!?
〔すると途端に、その場に膝を屈し、夥(おびただ)しい量の血を吐いて倒れ込む龍皇が・・・
勝負は―――無常ながらも、ここに決してしまいました。
けれども―――・・・〕
ヱ:あああ・・・わ、私はなんと云う事を―――ママーシャ!ママーシャ!!
ス:いいのだよ・・・これで―――これで、心置きなく・・・死ねる・・・
我が娘の―――成長ぶりを見られて・・・私は・・・ごふっ!
ヱ:ママーシャ!!
エ:スターシア様・・・もういいじゃないですか、総ての事を話しても―――
ヱ:シュターデン? お前・・・
ス:エルムを責めるな・・・固く口止めをしておいたのは、この私だ・・・
この業深き技を、お前に会得させる為・・・血の繋がった者同士が殺し合わなければならない―――
馬鹿げた話しだが、これは我が種族の鋼の掟でもあるのだ・・・。
それに・・・『光』の奥義は、それだけでは本来の威力は発揮されない・・・
こうした、悪しき業も身につけて初めて―――『光』は本来の輝きを発するものなのだ・・・。
〔龍皇・スターシア最期の時にして、始めて真相を知らされるヱリヤ・・・。
実の親子同士が、殺し合いをしてまで会得しなければならない業・・・
そんな業深きモノが、この世に存在するはずがないと信じたかったノブシゲではありましたが、
自分も嘗(かつ)ては、謀叛を興した実父を討った事がある為、今のヱリヤを嘗(かつ)ての自分と重ね合わせてもいたのです。
そして・・・スターシアは、最期の力を振り絞り・・・〕
ス:いいか―――これより、『光』のみならず、『闇』からも目を背けてはならん!
これからお前を待ち受けるのは、お前達が想像している以上の事だと思え!!
そして・・・何があろうとも、自分を―――あの方を信じるのだ!!
判ったなら征(い)け―――! そして女禍様と共に時代を照らすのだ・・・!!
〔・・・そう云い終えると―――スターシアは全く動かなくなりました・・・。
愛する娘の、腕の内(なか)で・・・その最期まで娘を叱咤激励して逝った者の表情は、どこか穏やかで微笑んでいたようにすら感じました。
そんな・・・凄絶な最期を遂げた母を前に、ヱリヤは―――・・・〕
ヱ:すまない・・・シュターデン、ノブシゲ殿・・・先に征(い)っていてくれないか・・・
後で必ず・・・追いつくから―――・・・
エ:そうかい・・・それじゃ、待ってるから・・・必ず来なよ。
ノ:ですが・・・それがしはここに残りましょう。
ヱ:お願い―――!征(い)って!! しばらく・・・一人にして・・・お願いだから!!
〔切願―――それは、ヱリヤ達(たっ)ての願いでした。
しばらくは母の亡骸(なきがら)と二人で・・・
そこで恐らくは、母への未練を立つ為―――
だから、ノブシゲの意思を断ってまで、二人を先に征(い)かせたのです。〕