≪三節;魔将筆頭≫
〔その一方―――東廻りの回廊組は・・・
やはり西廻りと同様に、ある存在がタケル達の征(い)く手を阻んでいたのでした。〕
カ:むっ・・・あれは―――ビューネイ殿!
タ:なに、あれが―――・・・
〔部屋の出口付近に仁王立ちをし、来(きた)る者を阻んだのは・・・魔将筆頭と讃えられたほどの強者(つわもの)でした。
しかし近年において、「埋伏の毒」であるカイン達を擁護するなど、行動の原理が不明な事もしていたのです。
その事を知っていただけに、カインとギャラハットの両者は、今にして自分達の征(い)く手を阻む魔将筆頭に対し、意見を申し立てたのです。〕
カ:ビューネイ殿・・・これはお久しぶりですな。
だが今は時を急いでおりますので、そこをお通しさせて頂けないものかな。
ギ:ワシからもお願い申し上げる・・・そなたは嘗(かつ)て―――
ビ:私が・・・諸君らを阻むのは、我が主の崇高な命によってのみ。
それをどうして・・・諸君ら如きの願いを聞き届けられるなど―――出来ようはずも・・・ありますまい。
〔慇懃無礼―――言葉遣いはどこか穏やか・・・且(か)つ、至極丁寧―――ながらも、陰ながら相手を見下すような感じ・・・
この事に触発されてしまうのは、現在にも・・・また過去においてもあるものなのです。
けれどそこを敢えてカインは控え―――ビューネイの主の事を引き合いに出そうとするのです・・・。〕
カ:そなたの主・・・確か―――シホ=アーキ=ガラティーナ・・・でしたかな。
しかし判りませんな―――なぜシホ殿がこの期に及んで・・・
ビ:フッ―――フッフッフッ・・・
カ:―――何が可笑しいのかな・・・
ビ:いや、これは失礼―――
カイン殿ともあろう者が、この世に存在せぬ者の事を盲信されるなど・・・思ってもいませんでしたから。
ギ:シホ殿が―――?
この世にはいない・・・だと―――? だがしかし、ワシは現に・・・
タ:そうだとも、シホはワシの命によって、カルマの内情を探っていたはず・・・
それがどうして―――・・・
ビ:もうそろそろ・・・よろしいかな―――
〔流言にて人心を惑わすの法―――それにより、立ち待ちその場は盤根錯節(ばんこくさくせつ)し始める・・・
そのことに躊躇(ためら)いを覚え、混乱し始めた十聖剣の内(なか)に、ビューネイは楔を入れようとしたのです。
すると・・・それによって―――彼が塞いでいた、次の部屋までの通路への出口は、自然と・・・〕
タ:(中々にやる・・・伊達に、魔将筆頭を名乗ってはおらぬ―――むっ?!)
―――・・・・。
カ:(・・・・・・。)
―――なるほど、つまり今は敵同士・・・と、云うわけですか、しかしそれが世の常とはいえ、これではあまりにも・・・
〔ビューネイが自分達を相手にするには、少なからず前に出なければならない・・・
するとそうなると、次の部屋までの通路に続くこの部屋の出口は、自然と開けてしまう・・・
そして今―――その途(みち)は、タケル達の前に指示(さししめ)されました。
けれど、ビューネイはその事に気付かないまま―――
その事をカインに目配せをし、カインもタケルに応えるように、ビューネイの注意を自分に向けた時、タケルと婀娜那は迷うことなく、先へと進んだのです。〕