≪五節;暗黒究極形態(アウゴエイデス)≫
〔たった一人の魔将に対し―――こちらは総勢八名・・・
しかも全員その手には、「聖剣」と呼ばれる優れた武器が存在していたのです。
それに・・・この時放ったのは、各自が修めた剣技の奥義最高峰ばかり・・・
だから、仕留めそこなった―――などとは思いたくもなかったのです。
けれど、セシルも感じていたように、皆どこか一抹の不安は拭いきれずにいたのです。
そしてその不安は・・・現実のものとなろうとしていたのです。
そう・・・ビューネイは―――〕
ビ:フフフ・・・これがあなたかだの全力―――確かに受け止めさせて頂きましたよ。
ギ:な―――なんだど?? なんて奴だ・・・オレ達の技を総て受けていながら・・・
ミ:(無傷・・・)―――手強いようですね。
ビ:いやしかし・・・それにしても、全力と云うのは、受ける側にしても心地が良いものです。
心に一点の曇りもない―――これ程他に清々しいものは見つかりませんでしょう?
紫:・・・っく―――ならば今一度!
カ:紫苑殿・・・お止(よ)しなさい、何度やろうが結果は同じ事です・・・。
紫:なんですって―――カイン殿!あなたは悔しく・・・
カ:悔しいですよ、そりゃ・・・けど仕方がない―――それはギャラハット殿もそう感じているはずでしょう。
「やはりあの時は、まぐれではなかった」・・・と―――
ミ:なんと・・・団長、あなたでさえも―――
〔一度に襲い来る聖剣技―――・・・
けれどビューネイの身体には、傷一つ付いてはいませんでした。
それもそのはず、彼は・・・剣技の総てを―――自身が持つ「サイネジア」と云う武器で防ぎきっていたのですから。
それに、この結果に終わってしまった事は、寧(むし)ろ当然だ―――と、した者もいました。
それがカインとギャラハット・・・
なにしろ彼ら二人と、ギャラハットの養女であるヒヅメノ三人は、以前ビューネイに斬りかかった事があったのですから。
しかも・・・その時も今の状況と同じく―――自らの最高奥義を持って・・・
「最高奥義」―――とは、この一撃を放てば「必勝」あるのみ・・・
―――の、はず・・・だった、のに・・・
こうも効き目がないのでは、あたら自信の喪失にも繋がってくるのです。
それでは一体どうすれば・・・この、最強の実力を持つ魔将の筆頭を討てるのか―――
ところが次の瞬間、自分達の勝利の確率が、また一段階希薄になってきた・・・
そう感じた―――感じざるを得なかったのです。
それと云うのも、この時さらにビューネイは・・・次なる段階―――
魔将の内(なか)でも、「三傑」に限り赦されたと云う・・・「暗黒究極形態」―――アウゴエイデス・・・〕
ギ:な・・・んだ―――ありゃあ・・・
セ:まさしく化け物―――私達は今まで・・・
紫:こんなの・・・敵うはずが―――
〔それこそは、まさしく暗黒の最終形態とも云える、「暗黒究極形態」・・・アウゴエイデス―――
最早そこには、人間の容(かたち)をしていない―――文字通りの不気味な魔物の有り様があったのです。
身体は倍化して、以前の数倍を誇り・・・眦(まなじり)や口元は耳まで裂け―――
口からは鋭い牙が何本も・・・またそれに倣(なら)うかのように、爪も獣のそれの様相(ようそう)を呈(てい)してきていた・・・
しかも最悪な事には―――〕
ビ:(ふむ・・・見様見真似(みようみまね)で、どうにかなるものですね・・・)
さて―――次は何をしてくれるのです。
あなた達の手がないと云うのならば、是非もありません・・・私の方も試したい事がありますので―――
付き合って・・・頂けますよね。
〔化け物のような姿になりながらも、内なる精神は元のまま―――
これがどれほど不気味で、ビューネイの手強さを物語っていたコトでしょうか・・・
冷静さを「装う」―――のではなく、「そのもの」と云うのは・・・ある意味で、本物の強者の証しであるとも云えたのです。〕