<第百四十八章;試練の道程(みちゆき)

 

≪一節;意外過ぎる結末≫

 

 

〔見たいモノは見た―――知りたい事も知った・・・

この時代―――「今」の時代ではなく、「次」の世代に輝きを放つ存在の事を、さある賢者の助手である者は認識しました。

 

そしてその事は同時に、この時代における彼の役割が終わりを告げた瞬間でもあったのです。

 

けれど振り上げた拳はそのまま―――

要は、いかにこの振り上げた拳を収めるか・・・いわゆる「落とし所」が肝要なのです。

 

でも、ベェンダーにとって、それはさほど難しい事ではないらしく・・・〕

 

 

ビ:―――フッ・・・健気なモノですね。

  とは云え・・・私もこんなところで足踏みをしているわけにもいかないのです。

  我が創主に事の次第を報告しなければなりませんから・・・

  だから、お仕舞なのです―――

 

 

〔口元で得も云われる笑みを讃え、化け物は云う―――・・・

最早格下を相手にするのも、時間の無駄だとでも云うように・・・

 

そして、彼自身の手でこの闘争の幕引きをするため、右手にあらん限りの気を集中させ―――・・・

そして―――・・・〕

 

 

リ:私達はこのままでは終わらない・・・ビューネイ、覚悟ぉ―――!!

 

 

〔恐らくは立つのもやっとだろうに・・・

それなのにリリアは、自らが慕う婀娜那のために、まさに玉砕覚悟で最強の魔将に突撃を敢行したのです。

 

そこでリリアは・・・無惨にもやられてしまうのだろう―――・・・

 

最終戦を前に、主のいない聖剣が―――彼女の墓標代わりに立つのだろう・・・

 

―――と、ばかり思われていたのですが・・・結果は意外にも・・・〕

 

 

ビ:ぐぶおぉ・・・

リ:―――・・・え?

 

 

〔周囲(まわ)りにいた者達は、今、自分達が目にしている光景に眼を疑っていました・・・。

その前に、その事を一番実感していたのは、他ならぬリリア自身だったではないでしょうか。

 

無謀にも―――実力差のある最強の魔将に、何も考えないで立ち向かって行った・・・

勿論、その行動に勝算などあるわけもなく・・・

 

良くて「犬死に」―――悪くても「犬死に」・・・

 

それが何の間違いで、致命となる一撃を与えていたのか―――・・・

 

けれども現実として、リリアのデュランダルはビューネイの身体に深く突き刺さり、雄叫びを上げて崩れ逝く魔将筆頭の姿があったのです。〕

 

 

ビ:フ・・・フフフ―――わ、私の完敗だ・・・勇者達よ・・・

  またどこかで相見(あいまみ)えることもあるだろう・・・さらばだ―――!

 

 

〔勝負の行方は、実に呆気ないほどついてしまいました。

それも、誰もが拍子抜けするくらいに・・・

 

それもそのはず、いくら自分達が束になってかかっても敵わず、最高の奥義を駆使してもダメージすら与えられなかったと云うのに・・・

 

それが―――まぐれの一撃で・・・

 

しかも腑に落ちない点はまだありました。

 

先程の、ビューネイが自分達を一掃するために、自身の右手に集中させていた気・・・

それは―――ビューネイが斃れると同時に周囲に霧散し、遍(あまね)く8人の勇者達の下に舞い降りてきたのです。

そして・・・ビューネイとの闘争において傷ついた勇者達の傷を治癒したのです。

 

これは不思議なことだ―――と、皆一様にして思いましたが、まだ次の闘争があるため、

考え悩む事は後回しにし、次なる強敵が待ち構える場へと急いだのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

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