≪二節;最大の難敵≫
〔西廻りの回廊組最大の難敵であり、最大の障害である龍皇・スターシアを仕留めたことを確認したエルムは、
親愛なる友であるヱリヤの言(げん)に従い、先を急いでいました。
ヱリヤ自らが希(のぞ)んだことではない―――けれど闘うしかなかった・・・
実の母と云えど闘わないわけにはいかず、結果として斃してしまったことにヱリヤは悔い、
こんな自分を慰めるよりも、戦友達に先を急がせることを選んだのです。
けれど・・・次の闘争の場所も、またも哀しみを招く場所となってしまう事を、彼らはどれだけ知っていたでしょうか。
ともあれ、この場所を抜ければ、あとは魔皇・サウロンが待ち受ける「玉座の間」だとされる、コキュートス城・大ホール・・・
この場所に一番乗りを果たしてエルムは―――〕
エ:(ここも・・・やはり―――)
〔敵の本拠の、それも当主がいるすぐ近くの部屋が、手薄なはずがない・・・
そのエルムの予感はすぐに当たりました。
何者かの侵入を感知すると、自動的に入る部屋の照明―――
そして、この部屋を護る新たな敵の影を、白日の下に晒したのです。
そしてそれは・・・エルムも見間違えるはずもなく―――〕
エ:(!)あなた・・・は―――もしやお師様!
〔嘗(かつ)ては・・・自分達が所属していた帝國の丞相であり、その服飾も白や薄色を基調としていた事もあり、
自分達や他の誰もが、その人物のイメージをそう捉えていました。
けれども・・・今―――自分の目の前に立ちはだかっているのは、そんな色彩とは相反(あいはん)する「黒」を基調としていた事もあった為、
誰彼云うことなく「黒の宰相」と、呼ばれるまでに様変わりをした人物・・・
それに―――・・・〕
ジ:フフ―――フフフ・・・エルム、よくここまで来ましたね・・・。
でも、もうこんな事は終わりにしましょう―――
―=裏面伍阡伍佰拾弐式;セレスティアル・スター=―
〔エルムが昔日(せきじつ)を懐かしむよりも早く、黒の宰相ジィルガはエルムを「敵」として認識し、先手として大魔法を唱えてきたのです。
しかもこの魔法は、ヴァンパイアであるエルムでさえも、直撃を受ければ無事では済まない事を判ってもいたため、
エルムは素早く影に紛れ、どうにか直撃を免れたのです。
そして再び影から出てきた時、今回の対戦が一筋縄ではいかない事を改めて肝に銘じ、臨戦態勢を取ったのです。
嘗(かつ)ての師であり―――友であり―――恩人であり―――上司でもあったマエストロ・デルフィーネ・・・
そんな人物と対峙し合わなければならなくなったエルムの、胸に去来してきたモノとは何だったのでしょうか・・・。〕