≪五節;聖剣の真偽≫
婀:なるほど―――そなたらの事情は大体把握いたしました。
なれど、妾にはそんな事は関係のないこと。
姫君の・・・妾の理想を阻むのは、譬え我が夫の義理の姉なれど・・・敵にございます。
ジ:あらあら―――威勢のいいことね。
それに・・・どうやらあなたが持っているのは、クロスクレイモア・ジグムンド・・・
そんな失敗作を持って浮かれているなんて、芽出度(めでた)いことこの上ないわね。
〔その一言は―――婀娜那にしてみればひどくショックでした。
旧(ふる)くから、故国ヴェルノアに伝わってきた「聖剣」と呼ばれる代物が―――その人が云うには「失敗作」だと云う・・・
しかし――― 一体何の証拠があって、この天下の名剣を鈍(なまくら)扱いにするのか・・・婀娜那には理解に苦しみました。
・・・が―――その意外な理由が、婀娜那にしても義理の姉の口から語られたのです。〕
ジ:フ―――だってその剣・・・いえ、その剣だけではなく、タケルちゃんが持っている「貮漣」も含める十本は、私が創ったモノだもの・・・
それに、九本目までは「貮漣」に行き着くまでの云わば試作品・・・つまり、「失敗作」と云っても差し支えないものなのよ。
〔伝説の剣や聖剣がそう呼ばれるのには、何かしらの謂(いわ)れがあるから―――・・・
その喩えを上げるとすると、「救国の士の所有物」などであったり・・・悪しき者を退治した時に使用された武器であったり・・・
普通の剣では斬れない堅い物を、いとも簡単に斬ってしまったり―――・・・など、様々な言い伝えがあったからこそ珍重され、
やがてはそう呼ばれるようになったのです。
けれど、それらを創造した本人が云うのだから間違いはない―――・・・
彼女の云う通りならば、伝説の剣や聖剣とは、「緋刀貮漣」一振りだけであり、残る九本は失敗作・・・鈍(なまくら)だとも云えたのです。
とは云え、俄(にわ)かには婀娜那には信じ難い事でした。
そうは云われても、過去には自分を幾度も扶(たす)けてくれた、自分の分身だっただけに・・・
でも、更なるジィルガからの言の葉に、婀娜那は―――〕
婀:そんな―――・・・でも、ジグムントはこれまでにも妾を・・・
ジ:扶(たす)けてくれた・・・けれどこうは考えられないかしら―――
なにもその剣が扶(たす)けたのは、持ち主ではなく―――剣自身だった・・・と・・・
〔その剣が能力(チカラ)を発揮したのは、持ち主である婀娜那を扶(たす)けるよりもまづ―――剣自身が自分を護るため・・・
確かに―――そう云われてみれば、そう思えなくもなかった・・・
事実、婀娜那自身はジグムントを大事にし、手入れを欠かすことはなかった・・・
けれども、もし心無い連中の手に渡り、手入れも行き届かないまま朽ちて逝けば、いくら聖剣と云われても所詮は鉄屑となってしまう。
この・・・美しい剣が―――刃毀(はこぼ)れをし、錆ついてしまえば・・・
やがて砕かれ、熔(と)かされ、釘の一本になってしまう・・・
そんな―――そんな末路を辿っていいわけではない・・・
やはり聖剣は、聖剣としてあるべきだ―――
・・・とは云え、聖剣は無機物ゆえ、意思などはない―――とも思われるのですが・・・〕
ジ:けれど・・・「神鉱」と呼ばれる「ジルコニア」で創られたモノは違う―――
ジルコニアは、それ自体が意思を持つ鉱物・・・だと云ったら?