<第百四十九章;魔皇と女皇>
≪一節;・・・そして決戦へ―――≫
〔嘗(かつ)ての教え子からの技を受け切ったジィルガは・・・それでも尚、倒れずにいました。
けれど・・・瀕死のダメージは目に見るより明らか、なのに何が彼女をそうさせたのか―――
すると大公爵は、止めの一撃を敢えてある男に託したのです。〕
大:タケル、何をしている―――早く止めを!
〔云われて初めて、タケルは光の刃を出現させ、苦しんでいる者に止めを・・・ラージャ流で云う「介錯」をしたのです。
そのあとで・・・急にジィルガの表情が和らぎ始め―――・・・〕
ジ:タケル・・・ちゃん・・・ありが・・・とう―――
タ:義姉上?! ・・・ジィルガ義姉ちゃんなのか―――?!
〔すると・・・その女性は、愛した義弟が心配することのないよう、懸命に微笑みかけたのでした。
そう・・・ここでも―――哀しい、肉親との別離(わか)れが・・・
けれどタケルも、あの頃と同じような少年ではないので、惜別の涕は堪(こら)えたのです。
それにまだ・・・この城には、倒さねばならない大敵がいる―――
「魔皇」サウロン・・・
この最大の敵を討ち倒さない限り、自分達の未来はない・・・
だから、サウロンの待つ玉座の間へと急行するのです。
しかし―――大公爵は、彼らが向かった後・・・まだその場に、しばらく留まり続けていました。〕
大:(フ・・・難儀なモノであったな―――いかに芝居とは云え、心苦しかっただろう・・・
今は、少しばかり休むがよい。
ナニ・・・復活の刻はすぐにでもやってくる―――あんたが希(のぞ)むと希(のぞ)まぬとに拘わらず・・・な。
それに、この惑星の運命は、最早我らの手を離れているのやも知れぬ。
まあ・・・今回は、それを見図るための闘争―――で、あった矢も知れぬ・・・な。)
〔そう大公爵は呟(つぶや)くと、この部屋の闇と同化しました。
しかし・・・彼の呟(つぶや)きには、今回の諸事情に関わりが深そうな事がいくつも隠されていたのです。
けれど・・・今、その事を知る術は―――皆無でした。
とは云え、新しい扉が開かれることによって、見えてくるモノもあったのです。
それはさておき―――マエストロが堅守・死守していた大ホールから、魔皇・サウロンが待ち構えている玉座の間までは一本道・・・
しかし、それまでの道程(みちのり)は、決して平坦ではなく・・・また長くさえもあったのです。
そして今―――最終戦を起するため、開かれた扉の先にあったものとは・・・
この戦闘に参加した誰もが、眼を疑う光景が広がっているのでした。〕