≪三節;漆黒の鎧の中身≫

 

 

〔ですが・・・この場所にいるはずもなかった女皇アヱカは、不思議なことを口走ったモノでした―――〕

 

 

ア:もう止めて下さい―――! どうしてあなたがここまでする必要があるのですか・・・

  彼らは・・・私達の理想のために、ここまで尽くしてくれたのですよ―――

  それをどうしてあなたが・・・理由をお答えください―――姉さ・・・

 

 

〔今―――何かを云おうとしていた・・・

まるで、自分と近しい間柄―――「姉妹」?

女皇であるアヱカに・・・「姉妹」??

 

しかしその言葉は、魔皇からの行為によって掻き消されようとしていました。

 

そう・・・彼の持つ魔剣―――「オートクレール・覇蝕の剣」・・・

その斬撃が、アヱカの頭上に振り下ろされようとしていたのです。

 

ところが―――・・・

間一髪のところで、清廉の騎士が持つ緋刀貮漣の光の刃が、女皇に降りかかる災厄を退けたのです。〕

 

 

ア:タケル・・・!

タ:ワシの主を殺すと云うのなら、ワシからそうしてもらおう・・・

  だが!ワシが生きている限りは、なんとしてもアエカ様はお護り通して見せる!

 

 

〔全く―――見違えたモノだ・・・

あの頃は、愛する義姉を喪(うしな)って涕に暮れていたと云うのに―――・・・

私は、少し・・・お前を見直したよ―――タケル・・・

 

漆黒の兜の向こう側で、謎の人物がほくそ笑む・・・。

 

それにどうやら、この漆黒の騎士―――魔皇サウロンは、女皇アヱカだけではなく、清廉の騎士タケルにも深い関わりを持っていたようだったのです。

けれど、終(つい)ぞそのことは、サウロン本人より語られる事はありませんでした。

 

なぜならば・・・「彼」と云う存在は、この物語の最初のお話しより以前の時点で―――この世に存在しなくなっていたのだから・・・

ならば・・・今ここにいるサウロンとは―――何者・・・?

 

すると―――魔皇からの一撃を受け切った・・・その次の動作で、覇蝕の剣を払いのけたタケルは、

返す刃で漆黒の甲冑を見事に割った・・・その時―――今のサウロンの正体が明らかとなったのです。

 

 

永らくの間・・・魔皇サウロンは、男性だと信じられていました―――

けれど、割られた甲冑の内(なか)より出てきた存在とは・・・女性―――

 

それも・・・熾緋色の長い髪を持つ―――美しき女性・・・

しかも、やはりタケルもこの女性には見覚えがあるモノと見え・・・〕

 

 

タ:(!)あ・・・あなたは―――

婀:あなた? あの女に見覚えが―――・・・?

 

タ:ああ・・・婀娜那、お前も知っているだろう、先程ワシらの行く手を阻んだワシの義姉の事を・・・

  以前お前にも話した事のあるように、今のワシがあるのもジィルガ様がその身を呈してワシの身をお守りしてくださったからこそなのだ。

  そして・・・義姉の葬儀の夜―――同じ色の髪をした「ガラティア」と名乗る女性から、本当のこの剣の使い方を教えて貰ったのだ。

 

 

〔意外な経緯で、事の真実を知って行く諸将達―――・・・

それに・・・なんとなく見えてきたこと―――

 

なぜ―――女皇の内の「古(いにし)えの皇」が、特に近しい間柄の者の名を呼ぼうとしたのか・・・

なぜ―――魔皇は「男」ではなく「女」だったのか・・・

だとするなら、魔皇はいつ滅んでいたのか―――

もう、この闘いは終わりではないのか―――

 

様々な憶測、思惑が交錯する中―――世に真実は一つのみ・・・なのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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