<二節;大志立つ>
ア:(はァ・・・・)なんだか、とっても困ったことになってまいりましたわ。
これから、どうすれば―――・・・
女:<なに、いいじゃないか、これも機会なんだし、受けてみたらどうだい。>
ア:女禍様―――・・・ですが、政(まつりごと)の経験の無いわたくしには、どうすることも―――
女:<おや?そうかな?>
ア:えっ??
女:<君は、自分自身では気付いていないかも知れないけれど、
何気なくやっているそのこと、それ自体が、政の一環を担ってきているんだよ。>
ア:わ・・・わたくしが、何気なくやっていること―――が、ですか??!
でも・・・これは―――
女:<ふふ・・・当たり前の事―――だと言いたいのだろうけれど、
その当たり前の事を、当たり前のように出来る人のほうが少ないんだよ。
苦しんでいる人達、困っている人達を、手助けするということが、本当は当たり前のはずなのに・・・
『無償』ではなく、『有償』で物事を捉えてしまう・・・それは、今も昔も変わりはしない―――
全くもって、皮肉な事だけれどね。>
ア:・・・・・。
女:<でも―――アヱカが本当に嫌なら、この話は断ったほうがいい。
嫌な事を強制的にさせられるよりも、ヤル気になったときにする事の方が、いいのは言うまでもないことだからね。
まぁ・・・私からしてあげられる助言は以上だけれど、他に何か聞きたいことがあるのなら言って御覧?>
ア:有り難うございます――――何から何まで、お蔭でわたくしの決心もつきました。
女:<ナニ、別にお礼を言ってもらえるほどの事はしていないよ。
当然の事をしたまでじゃないか。>
ア:うふふ――――・・・
女:<うん?どうした―――笑ったりなんかして・・・>
ア:いえ・・・あなた様も、わたくしと同じなんだなぁ―――・・・そう思いまして。
女:<えっ??何が―――? どういうことなんだい?>
ア:あら・・・おっしゃっていたではありませんか、『当然の事をしたまでだ』・・・って。
女:<それが―――??? あっ―――!そういうことか・・・参ったなぁ、自分で言ってて気が付かなかったよ。>
〔アヱカが、日頃何気なく行っていることも“当然の如く”ならば、今、女禍様がいいおいた助言も“当然”の然りである―――
その指摘に、二人は破顔一笑したのでした。
それはさておき―――― 前回、夜ノ街にいる、直属の上司に報告に上がるため、ウェオブリの宿を後にした紫苑――――
その四日後の事、ようやくにして、ギルドへと到着した様子です――――〕
婀:ハハハ―――――
客:ハッハッハッ―――――
―――バンッ――☆―――
紫:失礼いたします――――・・・・
婀:・・・・いかがしたのか、紫苑、血相を変えおって、そなたらしくもない―――
紫:あの――――(ちら)お人払いを・・・・
婀:(ふむ・・・)すまぬな、妾はこれより部下の報告を聞かねばならぬので・・・・
この話の続き、また後日――――と、いうことで・・・・
客:いえいえ――――話の分かる頭領であってくれて、実に嬉しくありますよ・・・・では。
紫:(ペコリ)・・・・あの者は?
婀:それより――― 何か言いたい事があるのではないのか、
そなたほどの者が、礼も弁(わきま)えず入室してくるのは、前例にもないことじゃからな・・・。
紫:はっ――――申し訳ございません。
ならば・・・ご無礼ついでに、今ひとつ――――お耳を、実は・・・(ぼそぼそ)
婀:(うん?)・・・・・・・・・・・ナニ?! それで――――ふむ・ふむ・・・・
〔丁度その時には、この街の古老と婀陀那が談笑しており、――――と、そんなところへ、紫苑が慌ただしく入室してきたのです。
その慌ただしさも、尋常(よのつね)のものではないと悟った婀陀那は、談笑していた話題を後日に引き伸ばすことにし、
部下である紫苑の報告を聞くこととしたのです。
そこで紫苑は、この報告が外に漏れないように、人払いをし――――耳打ちをしたところ・・・
すると婀陀那は、この部下がどうしてこういう手段に踏み切らざるを得なかったのか―――が分かってきたのです。
そう・・・ウェオブリにて、アヱカが被ってしまった、事の顛末を――――〕
婀:うぬぅ〜〜――おのれ! 以前より“蟲”の噂は耳にはしておったが・・・・忌々しきは彼の一党か!!
斯様な心お優しき方を卑下しおくとは・・・・高々その美貌のみで、王に娶(めと)られた成り上がり者が―――!!
(キッ!!)紫苑―――!!!
紫:はっ―――!
婀:これより計画を早めるぞ・・・いづれ執り行う事、それが今日明日であって悪いはずもなし―――!!
そなたも、自分の荷を取りまとめよ―――!
紫:ははっ――――かしこまりまして!
〔婀陀那は、知っていたのです・・・・フ国という“獅子”の身中に巣喰うという“蟲”の存在を・・・。
しかし、それがよもやこのような容で、しかもアヱカの身に降りかかってこようとは、思ってもみなかったのです。
そのことに、責の一端を感じ、当初から計画されていた事を早めるようです。〕