<第百五十章;死闘の果てに・・・>
≪一節;その存在=最強≫
〔最終決戦場―――カルマ国コキュートス城玉座の間にて、空前絶後の闘争が、これから繰り広げられようとしていました。
けれど、タケル達がこれから相手にしようとしていたのは、カルマ国総大将「魔皇」―――サウロン=カルマ=アドラレメク・・・ではなく、
女禍の実の姉にして、タケルも嘗て剣の手解(てほど)きを受けたほどの達人である、ガラティア=ヤドランカ=イグレイシャス・・・だったのです。
しかも彼女は、この世にたった一人存在する・・・ある畏るべき存在だったのです。
その事実を―――なんと、アヱカから・・・〕
ア:―――皆さん、落ち着いて聞いてください。
彼女の存在こそは・・・「リッチー」なのです!
イ:「リッチー」―――! 不死身の賢者と云われる・・・あの!
セ:でも・・・ではなぜ、アヱカ様がその事を―――
ア:その理由を、今お教えするわけには参りません。
ですが、今は集中を・・・斃すべき敵は、あなた達のすぐ目の前にいるのです!
〔おやおや・・・どうやらこの中で、一番状況を把握しきれているのは、あんただけのようだねぇ―――
それに・・・今の一言で、屍人に魂が入ったようだよ―――
さて・・・どうやらここからが、本当の意味での「正念場」と云った処のようだねぇ―――
女禍でさえ挫けそうになっている今・・・戦士達を励ましたのは、アヱカでした。
本来ならば護られる側の彼女―――リリアやイセリア、婀娜那や紫苑達のように、武芸を学んで来なかった最弱の彼女が、
気丈なまでの言の葉を紡いでくれたお蔭で、最早死に体だったはずの戦士達の眸に、再び光が宿り始め・・・立ち上がり始めたのです。
この光景を見て、ガラティアだけは解釈を違(たが)えてはいませんでした。
今・・・この時こそ、この人物は―――あの時自分と交わした約束を果たそうとしているのだ・・・と。〕
ガ:だから・・・勝手にブッ壊れるんじゃないよ―――!
――=カーネイジ=――
〔まさに・・・地も砕けよ―――と、云わんばかりの剛剣技に、婀娜那を始めとする十聖剣は、怯み・・・たじろぎました。
けれど、その剛剣技の効果や影響などは、彼女達の下にまで届かなかったのです。
そう・・・その時こそ、タケルのみが放てる「晄楯」の出番―――
それにしても、「最強」はどこまで行っても「最強」―――
まるで自分達が太刀打ち・・・入り込む余地さえない―――と、さえ思いたくもなるのですが・・・〕
ア:―――ならば、このわたくしがあなた達のために、途(みち)を指し示しましょう。
〔意外・・・と云えば、実に意外に感じたこのアヱカの一言―――
一片の武も修めていない彼女が、如何にして最強の女剣士を弱体化できるのか・・・
けれど、それが出来てしまうのです。
彼女だけが唱える事が出来る・・・さある最凶の呪文をして―――〕