<第十六章;陥穽>
≪一節;公示≫
〔それは―――・・・余りに突飛で、誰もがそう思わざるを得ない出来事でした。〕
盗:えぇえ〜〜―――っ?!! な、なんですってぇ?!!
盗:そ・・・そいつは、本気なんですかい、頭領!!
婀:本気も、何も・・・これは妾自身が決めおいたことじゃ。
盗:し―――・・・しかし、オレ達の唯一の拠り所を・・・
盗:おぉよ―――それに、ギルドが解体されりゃあ、明日からどうやって食っていきゃあ・・・・
婀:その事なら、心配無用じゃ。
うぬらの受け入れ先も、とうに決めておる。
盗:は――――?
盗:へ――――?
盗:そ・・・そいつは一体どこなんで??
婀:(ニャ)それは―――・・・の
〔そう――― アヱカが、かの国にて、不当な処遇に遭っているとの報を聞いた婀陀那は、
既に次の日には、ギルドに所属している全盗賊たちを集め、近日中にはこの組織を解体する・・・との旨を述べたのです。
――――が、やはり――――と、いうべきか、その反発も、少なからずあったようです。
そこで、婀陀那は・・・この者達に、一つの提案をしてみたのです。〕
盗:え゛っ?!ええ〜〜――――っ??!
盗:フ????
盗:あのっ―――・・・『中華』の国ッすか?!
婀:ああ、そうじゃ・・・・どうじゃな?驚いたであろう。
盗:お・・・驚いたもなんも―――
盗:あぁんな・・・気位の高いとこが――――オレ等みたいなのを??
盗:受け入れてくれるの・・・・か?
盗:い・・・いや、前犯歴(まえ)が割れて―――縛り首になるんじゃ・・・
―――わぃわぃ・がやがや―――
〔この組織、ギルドにいる全盗賊の『フ国参入』――――その事に驚きもし、また自分の生命を危ぶむ声―――・・・・
このように、婀陀那が出した案は、彼らの間では賛否両論だったのです。
そこで――――〕
婀:ナニ・・・うぬらが心配しておるようなことは、微塵ほどにも起こりはせぬ。
それに、あすこには、妾と顔見知りも幾人かおるでな・・・・
妾と共に来るというのなら、前犯歴(まえ)などもみ消してくれるよう、頼んでやっても構わぬぞ。
盗:え゛え゛え゛・・・・
盗:まじぇ〜〜―――???
盗:そ・・・それより、頭領・・・・あんたって、一体――――
婀:妾からいいおく、『火急の用』とは以上じゃ・・・・。
ここから先は、うぬら自身で考えて決めよ。
妾と共にフへと来るもよし―――、このまま、心(しん)から盗賊に成り果てるも、またよし――――
盗:お・・・おい、どうする――――?
盗:あ・・・・ああ――――
盗:オ・・・オレ、頭領についていこうかなァ・・・・
盗:でも、盗み癖かついちまってるからなァ・・・・
婀:ああ、それから一ついい忘れておったが・・・・次に妾と顔を合わせた時には、覚悟をしておくようにな。
盗:は――――???
盗:どういう事?
婀:ナニ―――― これは、今後も盗賊家業を続けていく者に対して・・・じゃよ。
夜道で遭うにしろ、賊の“掃討戦”で出会うにせよ・・・次に遭うときには、容赦はせぬから・・・・な。(ニャ)
―――ゾク・・・―――
〔フ国の上層部と面識のある、盗賊共の頭領??
この、彼女の隠されたる一面に、少なからずの動揺が見て取れる盗賊達に、釘をさすような婀陀那の一言・・・・
また、それに背筋を凍らせてしまう、ギルドの盗賊たち――――
そして、そのあとで――――〕
婀:・・・・・何か、言いたげじゃな、紫苑。
紫:はあ・・・・しかし、何もあそこまで言う必要が――――
婀:あった――― 次に見(まみ)えた瞬間(とき)、妾がいいおいた状況になるやも知れぬ・・・・。
その時に、それ相応の覚悟をしておいてもらってくれねば――――な。
紫:はぁ・・・・そうですか――――
では、私は自分の荷をまとめますので・・・・失礼いたします。
婀:うむ――――
〔このとき・・・・紫苑は、なぜかしらあの言葉は、婀陀那が自分自身に戒めていたものではなかったか――――と、感じていたのです。
もし―――― あの時の言の通りの状況下になった時、実は婀陀那自身が情に流されてしまい、盗賊たち相手に剣を振るえなくなるのではないか――――
それを自問自答していたのが、口に出たのでは・・・・と、思っていたのです。
それはそうと―――― こちら・・・・フのアヱカは―――――〕