≪七節;蒼穹の鎧を穿(うが)つ武器≫

 

 

〔そして――――その子供を小脇に抱え、竜の騎士が一跳躍して、着地(つ)いた場所・・・

それは、竜の騎士自身が、住民達にここから逃げるように指示した場所―――南門―――〕

 

       

 

竜:≪さぁ、ついたわ・・・・・よ――――(うっ!!)≫

子:うん、ありがとう・・・・ああっ!!

 

 

〔残念な事に・・・そこには、生きている者は、ただの一人として、いなかったのです――――

 

なぜならば・・・〕

 

 

竜:≪な・・・なんという事を・・・・『待ち伏せ』とは――――!!≫

 

副:あぁ〜〜ん? 四つある門の内、一つを空けといて、そこに兵を伏せる・・・ってのは、常識だろ〜がよ・・・。

 

 

〔そう―――わざと南門の手勢だけを、手薄にしておき、そこから逃げる者を片っ端から殺傷する・・・

そのことは、このカ・ルマの副将が言ったように、兵法の中でも、初歩の一つ・・・だったのです。〕

 

 

竜:≪し、しかも―――・・・己らよく見てみれば、カ・ルマに組みしおる人間(ヒューマン)・・・・

  ゆ、赦さんっ――――! 私は断じて赦さぬぞ――――!!!≫

 

副:はん―――ッ!赦さないんだったらどうだってぇンだ・・・・。

  それに、お前みたいな化生が、たった一匹で、何が出来るか! バカめが!!

 

竜:≪そうか・・・・己らやはり、心の底から腐りきっているようだな・・・・

よかろう――――! 己ら全員、我が画戟の錆にしてくれよう―――!!

 

(ス・・・)危ないから―――あの門の陰に隠れてなさい・・・。≫

 

子:えっ・・・でも――――

 

竜:≪いいから―――・・・≫

子:う、うんっ―――

 

 

〔敵の計略にかかり、多くの弱者たちに対して、申し開きの出来ないことをしてしまった竜の騎士は、

この計略がカ・ルマ軍のものであることを知り、その怒りの度合いを増していったのです。

 

しかしその前に――― 一足遅れで助けあげた、小さな生き残りを、自分たちの戦闘の巻き添えで亡くさないよう、物陰に・・・

街の門に隠れるように促したのです。〕

 

 

副:フン――――バカが、我らと共に来れば、人間など好きなだけ弑せようものを・・・・

 

竜:≪(ジロ・・・)己らのようなヒューマン(クズ)を弑してよいという断ならば・・・すでに我が主より下っている・・・

  見ておれよ――――楽には殺しはせんぞ!!≫

 

副:な―――・・・なんだと?? オレ達の事をクズ・・・だと?! ぐぬぅ〜〜―――キサマぁぁ!!

 

竜:≪悪いが――――それ以上は聞く耳を持たぬ―――!!≫

はあぁああ―――――!!!

 

 

〔フロスト・ヴェイト;またを『躍動せし、凍てつきの閃光』と呼ばれるこの技は、竜の騎士自身が醸し出したる凍気を、たった一点に集約し、

そしてそれと共に突進をすると、敵全体及びフィールド上が一気に凍結・・・その後に画戟で総てを粉砕してしまう畏るべき技。

 

 

しかし―――この畏るべき技で、その場にいた敵全部を蹴散らしていくのですが・・・・

相手も然る者、それ以上のある事をして、この竜の騎士に意趣返しをしてきたのです。

 

では、その“ある事”とは―――――?〕

 

ド・ズ――――

 

竜:≪う・ぐっ―――・・・(ガ・ク)

 

 

〔多寡が・・・人間如きに―――それも、カ・ルマに組する者に、屈せられようはずはないのに――――・・・・

竜の騎士、ハイランダーは・・・不覚にも、彼らの攻撃を受け、その膝を折ってしまったのです。

 

ナゼ――――?

 

当時ある製鉄技術では、その蒼穹の甲冑を貫ける存在(モノ)は、あろうはずがないのに――――・・・

 

何故――――??

 

でも・・・そのハイランダーの背には、飛杖の先に括りつけられた、あるモノが存在していたのです。

それはなんと―――・・・〕

 

 

竜:≪痛ッ―――!(ズ・ポ・・・) こ、これは―――!!『ドラゴンスレイヤー』!!

  な・・・何故に、わが身に唯一仇なせるこの武器を、キサマらが―――・・・・≫

 

誰:ふっふふふ――――・・・存外に効くものよ・・・なぁ。

 

竜:≪ナニ―――? キサマ・・・何者?!≫

 

ダ:(ダイン;その狡猾たる頭脳は随一)

  ふっふっふ―――― この度、この軍(いくさ)の軍酒祭謀を預かる、ダインと申す・・・。

 

竜:≪ナニ?! 軍酒祭謀―――? すると、この計略はキサマが・・・・≫

ダ:だ――――としたならぁ?!(ニャ)

 

竜:≪ゆ、赦せんっ―――! 何故に非戦闘員である民達に刃を加えるなどと―――・・・≫

ダ:(フ―――ククク・・・)だが・・・まぁ――――しかし、ここの総責任者を燻(いぶ)り出すつもりが・・・・

  それが、お前のような異形の戦士と出くわす事となろうとはなぁ―――!! やれいっ――――!

 

 

〔それは―――刀剣すらはじく竜の鱗をも貫ける“人知の奇蹟”『ドラゴンスレイヤー』だったのです。

 

すると・・・敵兵の中より出てきた初老の小男――――ダイン・・・そう、ナニを隠そうこの者こそ、この度の計略を執り行った者・・・

そして、さらにハイランダーめがけ、いくつも投擲された、ドラゴンスレイヤー付きの飛杖・・・

 

やがて、その中の一つが・・・竜の騎士のヘルメットを割ってしまうこととなり――――

この、異形の戦士の、意外な素顔が・・・・白昼の下に晒される事となったのです・・・。〕

 

ガッ―――・・・                                                                                           

    シィ・・・

 

パシャァアア―――――・・・

 

キ:くっ――――・・・

 

子:あっ―――ああ!! あの人・・・キリエのお姉ちゃん?!!

 

ダ:(ほほぅ―――)

 

 

〔兜代わりのヘルメットが割られ・・・そこから覗いてしまった顔を、助けられた子供は知っていた・・・。

 

時々、店の前を通りかかった時に、老店主の代わりに店番をしていた彼女―――・・・

こっちから微笑みかけると、微笑み返してくれた彼女―――・・・・

近所のいじめられッ子に、いじめられていた時は、あのお婆さんより迫力のある声でいじめっ子を追い散らし――――

でも・・・自分を慰めてくれたときは、なんとも優しかった・・・

あの瞳―――

あの声―――

あの表情―――

 

それが・・・たった一人で、数十人の兵士達を向こうに回して相手をしていた、あの竜の騎士と同一の存在であろうとは―――・・・

それも、苦手としている武器を、幾つもその身体に喰い込ませ・・・子供を庇っていた存在だったとは――――!!!

 

しかし、皮肉な事には――――〕

 

 

ダ:フッフッフフ―――――よい余興だったが・・・お前もそのままでは立っているのが辛かろう。

  どれ・・・止めを刺してやれ――――

 

兵:ハハっ―――! うりゃああ――――!!

 

ズ・ドッ―――!

 

キ:ぅ・・・ぐ!! も・・・申し訳、ございません・・・お方様―――陛下―――

  キ・・・キリエ=クォシム=アグリシャス・・・志半ばで、堕ち逝く事を――――お赦し・・・・・ぁ・・・・・・・・

 

 

〔最期の一投は、無情にもキリエの胸元深くに突き刺さり――――そこからは大量の血飛沫(ちしぶき)が・・・・

そして、大音響と共に、膝から崩れるようにして倒れる、ハイランダー・キリエ・・・・

 

ここに、無敵伝説は――――幕を閉じてしまった・・・・のでしょうか??〕

 

 

 

 

 

 

 

 

>>