≪八節;婀陀那出陣≫
〔その一方で――――こちら、北門付近では・・・・〕
婀:よいか―――! なんとしても、ここを奪取し返すのじゃぞ!!
盗:応ぅっ―――!!
婀:(さぁ・・・かかってくるがよい! 非人道的なる者よ・・・妾の最後の意地、篤と見せてくれようぞ!!)
〔軍団の兵士(元は盗賊)を鼓舞し、士気を高める婀陀那。
しかし、攻め手であるカ・ルマの将、フォルネウス=クシィ=ダグザは、そのようなことなど、意に介さず・・・と、言ったところか―――〕
兵:伝令―――依然、あちら側の士気は高まりつつあります。
フ:棄ておけ・・・・・
兵:はっ??
フ:棄ておけ―――と、言っている。
所詮・・・惰弱な人間如きが・・・我らに抗おうなどと、賢しいに過ぎるわ―――
〔魔将の一人は―――不敵にも、このギルドの抵抗など、『窮鼠』くらいにしか感じていなかった・・・
だが、窮鼠は猫を噛んだりもする―――それであるにしても、所詮は鼠・・・猫には敵うはずもあるまい―――と、多寡を括っていたのです。
そのことを知ってか知らずか・・・こちらギルド陣営では――――婀陀那が恐るべき計略をして、形勢を逆転させようとしていたのです。〕
婀:むぅ―――・・・。
(中々にやりおる・・・兵一人一人の練度では敵わぬか―――流石に、その武をして、ここまで成り上がった・・・と、するべきか・・・な。)
じゃが・・・これから、妾がなする事に、澄ました顔でおれるかなぁ?
盗:用意が整いましたぜ―――お頭ァ。
婀:うむ、ご苦労―――
これより、妾は敵陣深く斬り込む、そして、相手が浮き足立ったところを見計ろうて、全員で畳み掛けるのじゃ―――!!
盗:ちょ―――ちょいと待ってくだせぇ、するッてェと・・・お頭一人で―――ってことですかい??
婀:うむ、その通りじゃ。
妾も、頭領の座に居座っておるからには、それ相応の事をしてやらねばのぅ・・・。
盗:そ―――それじゃあ、オレも一緒に行きますぜ!!
盗:いや、待て・・・オレもだ―――!!
盗:オイラも―――!!
婀:ならぬ―――! 行けば必ず保障されるは“死”のみぞ!!
それに・・・妾一人のほうが、かえって身軽に動けようというもの―――余計な手勢など、足手まといなだけじゃ・・・。
盗:と・・・頭領。
婀:(フ・・・)よいな―――相手が浮き足立つを見るや否や―――じゃぞ!
盗:ま、待ってくだせぇ・・・な、なら、そうならなかった場合は―――
婀:・・・・ここを棄て、フへと落ち延びよ。
盗:んな―――・・・
婀:そういう表情(かお)をするな・・・それでは、妾が死にに行くようなものではないか・・・
盗:で・・・ですが、しかし―――
婀:(フ・・・)妾はな・・・とある方と重大な約定を交わしておる・・・豈、このようなところで犬死になんぞ出来ようか・・・・
よいな―――!あとは託したぞ!!
〔その時、彼女は微笑んでいた―――その笑顔は、とても盗賊たちを、ひとまとめにしている首魁のものとは程遠いものだった・・・
でも、盗賊たちは、時たまにしか見せない、婀陀那のこの顔が、たまらなく好きだったのです。
日頃は、厳しい顔しかできない―――彼女の、年に一度しか見せないであろう、その笑顔・・・・
でも、そこにいた者達は、こうも感じていたのです、『もう二度とあの顔は見れないかもしれない・・・』と―――
しかし、そんなこととは裏腹に、白銀の甲冑に、腰に佩いたるクロス・クレイモア、練り絹のマントを翻し――――
婀陀那は、たった一騎で・・・敵陣に乗り込んでいったのです。〕