≪二節;生家≫
タ:うむ――― 実は“東”のほうへ・・・
ノ:(東―――・・・)ヴェルノア―――か?
タ:いや、真東に位置する“ハイネス・ブルグ”に・・・だ。
ノ:ハイネス―――・・・そんなところに行って、何をしでかすつもりだ。
タ:以前より、文を交し合っている者がおってな、字体も綺麗で、言っていることもすっきりと一本筋が通っている。
それで、どんなものか・・・と、知りたくなって、会う事にしたのだ。
ノ:ほぉ―――・・・“文をかわして”・・・か、やるようになったものだな、お前も。
タ:うん―――?! なにが・・・だ。
ノ:いや―――なに・・・そちら方面は、あの方が亡くなってしまったことに際し、からっきしになったものだ―――と、思っていたが・・・
なぁんだ―――そうか、お前にもようやく遅めの“春”が巡ってきたという事だなぁ!?
タ:フッ―――――・・・・フフフフ・・・・・何を勘違いしているのかは知らないが・・・
ワシが会いにいかんとしているのは“男”だぞ?!
ノ:は―――・・・はあ゛ぁ゛?!! お・・・・をとこぉ?!! お・・・お前―――そんな趣味があった・・・のか??
タ:ヤレヤレ―――・・・人との付き合いを、そんな風にしか見ておらんとは・・・
視野が狭い証拠だぞ、弾正。
ノ:はっ―――言うな。
大体、こんな“漢盛り”を捕まえて、浮いた話の一つも無い、お前にはいわれたくはないわ。
タ:それも―――そうだ・・・
―――あっはっはっは―――
〔ところが、タケルの口からは、そうではなく、ガルバディア大陸を形成している“列強”の一つで、
自国でもあるラー・ジャ・・・その真反対の“真東”に位置する、『ハイネス・ブルグ』という列強の一つに―――
と、いうことだったのです。
しかも――その理由を聞いてみれば、『文通相手』に会うためだとしており、
これにはノブシゲも、『ようやくこの堅物も身を固める気になったか・・・』と、おもったようですが、
でも、すぐにそれは勘違いだと諭されたのです。
そして、別れの段になり――――〕
タ:それでは―――― 少納言様にも、宜しく言っておいてくれ・・・。
ノ:ああ――― 親父には、それがしからもよく聞かせておくとするよ。
タ:うむ――― では・・・・。
ユ:あの――――タケル様・・・。
タ:どうした・・・ユミエ―――
ユ:いえ・・・ただ、お屋敷のほう、近いですから―――
タ:(ふぅむ・・・)そうだな――― 寄って、チカラのヤツにも言っておくか。
〔体裁のいい形で、ノブシゲの屋敷をあとにした主従は、その足を、また別の屋敷―――シノーラ家本邸に向かわせたのです。
すると、そこには、タケルとよく似た容姿を持ち合わせながらも、少しばかり上背の低い(とは言っても、六尺一寸六分<185cm>)好青年が。〕
チ:(チカラ=左近=シノーラ;22歳;男;タケルの、二歳下の実弟であり、“花実兼備”を地でいく若者でもある。)
あっ―――これは兄上、いかがされたのですか。
タ:うん―――まぁ・・・な、少し近くに寄ったものでな・・・。
チ:そうですか、あの―――ごゆっくりしていけるんですか?
タ:いや―――ちょっと寄っただけだからな・・・お前が、どうしているか、気になったものでな。
チ:そう・・・・でしたか・・・。(チラ)
ユ:・・・・。(ペコリ)
チ:(ユミエさん、有り難う・・・)(ペコリ)
ごゆっくりしていただけないのは、残念ですが―――
タ:ああ、また何かの機会があったのなら寄らせてもらおう。
―――・・・おお、そうだ、代わりといってはなんだが、庵のほうを空けるから、その間は自由に使ってもかまわんぞ。
チ:えっ――――ほ、本当ですか?!!
タ:ああ、本当だとも。
チ:あ・・・有り難うございます!兄上!!
タ:はは――― では、親父殿も、お袋殿も労(いと)うてやってくれよ・・・大目付殿。
〔その―――好青年こそ、タケルとは二つ違いの実弟であり、将来を嘱望された兄の背中を見て育った者でもあったのです。
ですが―――14年前のあの事件により、当の兄は失意に打ちひしがれ、就いていた要職も辞し、
剰え、当家を出奔するまでに至ったのですが・・・
それでも尚、この弟は兄の事を慕っていたのです。〕