≪三節;主従再会≫

 

 

〔ところ変わって――― ここ、ガク州では・・・〕

 

 

ア:ふ・・・・う―――

女:<どうか・・・したのかい? アヱカ・・・。>

 

ア:女禍様―――・・・いえ、この地に赴任してきて、常々思うのですが・・・

  この、州公としての持ち物・・・余分なものが、多様にして過ぎるものがありはしないか―――・・・と。

 

女:<・・・なるほど、つまりアヱカは、州の民が倹(つま)しくも、貧しい暮らしをしているのにもかかわらず、

  どうして上の者達ばかりが贅沢な暮らしをしているか・・・不思議なんだね。>

 

ア:はい――― 高々、よい家柄に生まれただけ―――・・・と、いうのに、この差はどこから生じてしまうのでしょう。

  皆・・・手を取り合って、愉しく暮らせればよいものを・・・。

 

女:<ふ・う―――・・・(ヤレヤレ、困ったな・・・)>

 

 

〔本日のお召し物を着ようとした時、なぜかしらため息混じりになっているアヱカ・・・。

しかし―――それは、今までにも多少なりとも感じていたこと・・・“どうして人の間には貧富の差が生じてしまうのか”

が、疑問に思ってしまっているのです。

 

そして、それは女禍様も―――

実はこの方も、その施政の重きには、“いかに貧富の差を縮めれるか”が主幹としてあり、

このときにも、自分と同じところにはまり込んでしまったアヱカが、気の毒にも愛しくも思えてならなかったのです。

 

 

その後―――このことを、セキに相談を持ちかけたアヱカ・・・〕

 

 

セ:はァ・・・・なるほど、つまり州公としての持ち物を、いくらか払い下げにし・・・その金銭で州の財政を潤そう―――と、いうのですな?

ア:はい――― できるでしょうか?

 

セ:ふぅむ―――・・・とはいえ、お召し物やそれにつける装飾品などは、いづれも高価なものばかり・・・

  それに、そのようなものが庶民の手に渡り、着飾った―――と、したら、官僚達の目にはどう映るか・・・・

 

ア:(あ―――・・・)やはり・・・ダメですか・・・・。

セ:いや、しかし―――州公様のそのお志は分かります。

  分かるのですが―――・・・・

 

―――すると、そのとき・・・―――

 

ア:そうだ―――! 確か・・・この近くには“夜ノ街”という処があると聞いたが・・・ご存知ないだろうか??

せ:は・・・あ?? 夜ノ街―――・・・。

  ひょっとすると、盗賊などの類が、街一つを統括しておるという・・・あれの事ですか??

 

ア:ああ、そうだ―――・・あそこなら、きっと高値で買い取ってくれる事だろうと思う。

  よし―――それならば・・・

 

セ:お、お待ちください―――州公様!!

  く、詳しくは知りませんが・・・どうしてあなた様が、そのようなところをお知りに―――??

 

ア:えっ――― いや、実は・・・私の国が滅んだ折に、偶然辿り着いた場所がそこでね、一時期大変お世話になった処でもあったんだ・・・。

  でも・・・そこの人たちは、こんな私にでも、とてもよくして下さってね、それは今でもとても感謝している。

 

  それに・・・鑑定士さんや、小間物屋のお婆さんなど、そちら方面の知り合いも沢山できたし・・・ね。

 

セ:・・・そうでしたか。

  (この方――――は、確かヴェルノア公国の、公主様よりの紹介状にて、この国に参内された―――と、伺ったが・・・今のは??

         これは・・・この方の事をよく知りおくために、一度調べておかねば―――・・・)

 

 

〔この時―――アヱカ・・・いえ、アヱカの身体を借りて存在している女禍様は、ご自分の発言に、多大な落ち度があるのが分かりませんでした。

 

しかし、それはアヱカが、ヴェルノア公国の公主様の、紹介状付きで来たことを知っている者だけであり、

何も、数ヶ月前まで、夜ノ街は“ギルド”に潜伏していようとは、思っても見なかった事なのです。

 

それであるがゆえに、アヱカの・・・今までに至る経緯を、調べてみようとする侍中・セキ―――・・・

 

しかし―――これが、実に意外なところから、解決して行ったのです。

 

それは・・・このガク州城、南門にて―――

二人の少女を連れ立った、少しやつれたような若い女性の姿が―――・・・でも、それは紛れもなく。〕

 

 

門:(ん〜〜――・・・?)なんだ―――!お前達は、怪しいヤツめ!!

 

キ:お―――・・・お願いします・・・こ、ここの州公様に会わせて――――

門:なんだと?? 州公様に会わせろだ??!

  何を言ってやがるか! 下賤の身なりをしたお前らなんぞに、州公様が会われるか―――!! 帰れ、帰れ―――!!

 

キ:お、お願い〜〜―――・・・頼みます・・・私たちは決して怪しい者では・・・・

コ:みゅぅぅ〜〜――――・・・・(くてェ)

乃:ち、ちかれたでし・・・。(くてェ)

 

 

〔そう―――その三人こそ、誰あろう・・・キリエ・コみゅ・乃亜の三人だったのです。

 

――――が、どうしたことか、三人とも宜しく疲れていたようで、この城門の門番も、つい“怪しい者”だと思ってしまったのです。

 

そして・・・そうこうしているうちに、城門が内側から開き始め・・・そこから一台の馬車が――――〕

 

 

門:(あっ――――・・・)控えおろう―――! 州公様の出立でござる―――!!

 

 

セ:さて・・・今日はどうしなさいましょう。

ア:そうですね―――今日は・・・・(チラ)

  あっ―――!! 済みません!止めて! 馬車を止めて下さい―――!!

 

御:えっ―――?! ああ・・・へいへい。

 

セ:州公―――? アヱカ様―――?? いかが・・・・(あッ―――)

 

 

〔その馬車には、セキとアヱカが乗り合わせており、やはり今回も、領内の見回りに出ようとしていたようです。

 

――――と、ところが・・・アヱカが、門の傍にいた、この三人の姿を見・・・早急に馬車を停車させるよう促したのです。

 

このことに、セキは驚きもしたのですが・・・でも、それこそは――――主従再会の機・・・・〕

 

 

ア:キリエ―――!! 大丈夫か?!!

キ:あぁ・・・主上・・・よかった―――ようやく辿りつ・・・・(ガ・ク・・・)

 

ア:キリエ―――!! これ、セキ殿! この者達を早く城内の私の部屋に―――!!

セ:えっ―――?? ああ・・・は、はい。

 

 

〔ようやくにして、再会できた自分の主に、半ばほっとしたのか、アヱカの腕の中で、崩れるように沈むキリエの体・・・。

これには流石の女禍様も、ヒヤッとしたのか、三人三様に州城の自分の部屋に落ち着かせるよう命じたのです。

 

でも・・・一番に驚いたのは、この城門の門番で――――

よもや自分が足蹴にしていた者が、州公・アヱカと知り合いだったとは、努々思っていなかったようです。〕

 

 

 

 

 

 

 

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