≪第二節;鑑定士≫

 

 

ス:ほぉぅ―――こいつぁいいカモを見つけたねぇ。

  ありゃア、一見すりゃあ何のことはないように見えるが・・・あの立ち居振る舞いといい、きっといいとこの出だねぇ。

 

  巧(うま)くすりゃ、今夜の酒代ぐらいにゃなるかも知んないねぇ。

 

 

〔そしてこのスリ、誰彼に感付かれる事なく、この姫君の前に回りこみ・・・・そして、おもむろに彼女の方に向かって、歩み寄って行ったのです。〕

 

 

ア:あ・・・・っ!?

ス:おおっと、済みませんよ・・・―――・・・っと。

 

ア:あっ、こちらこそ申し訳ありません、よく前を見ていなかったものでして・・・

ス:いえいえ、気にするこたぁありやせんよ。

  んじゃ、ゴメンなすって・・・。

 

 

〔今、向こうからぶつかられながらも、自分から謝ってしまわれるとは・・・・

どうやら、この姫君の人の好さは、筋金入りのようです。

(それに・・・今、何か盗られませんでしたか?)

 

そして姫君、そのままで一軒の飲食店のような所に入っていったようです。

では、もう一方の盗賊はどこへ・・・??〕

 

 

ス:ほほーう、こいつは案外いいモノを持っていなさるねぇ。

  んん?何かね・・・この紋章みたいなのは・・・まっ、いいっか、あいつのところへ持って行きゃ。

  フフン・・・・こいつは、今夜の酒代以上・・・いや、もしかするともう半生くらい遊んで暮らせるものになるかもねぇぇ・・・。

 

 

〔なんと・・・やはり、あの姫君の懐から、彼女の路銀入れを失敬していたようです。

そして、その路銀入れの造りの大層豪奢な事に驚きはするのですが、もう一つ目を引いたのは、あの例の・・・・

最後の護衛将マサラから託された、母君の形見である「テラ国の紋章つきのロザリオ」だったのです。

 

そしてそれを換金するのに、馴染みの両替商のところへ行く、盗賊・・・〕

 

 

ス:ちょーッと、ゴメンなさいよ・・・・っと。

 

ナ:(ナオミ;女性;23歳;この両替商を営む、この盗賊とは、古くからの知り合い・・・・のようだが??)

  なんだい・・・・あんたかい。

  ちょっと待ってな―――よし、いいよ。

  ・・・で?今日は何の用だい?

 

ス:うん?いや・・・何ね。

  ここの先の道端でいいもん見っけちゃってね。

  んで、お前さんに見てもらいたいんだよ。

 

ナ:ふん・・・まぁた、どうせ人様のモノでも失敬したんだろ??

ス:へへっ、ご明察。

  それでよ、お前さんとこへ来た・・・ってワケなのよ。

 

ナ:フフフッ・・・まぁ・・・なんてったって、あんたは昔っからの馴染みだからねぇ。

  多少の色目は付けさせてもらうよ。

ス:へへっ・・・いつも、すまんね・・・。

 

 

〔ここでこの両替商、鑑定に入ったようです。

実は、彼女は鑑定士としても、この界隈では名が通っており、まぁその結果ここの店には、色々なモノが軒を並べているようなのです・・・

 

が、しかし・・・?〕

 

 

ナ:・・・・・・。(うん??おや・・・? ・・・・・こ、これは!!?)

 

 

〔鑑定士、姫君のロザリオを調べている際に、何かに気付いたようです。

 

そして・・・・気になる、その鑑定結果は??〕

 

 

ス:はあぁぁ??た・・・たったこんだけかい・・・?

 

ナ:うん?ああ、そうだよ。

  なんか文句があるってかい?

ス:そりゃ大ありだろ??! あの路銀入れ・・・は、まあこれでいいとしよう・・・。

  でも、あの装飾品が、こん中に入ってやしないんじゃあないのかい?

 

ナ:だったらどうだって? あんな・・・・ガラクタ同然の―――あたしんとこで買い取れ・・・ってンなら迷惑料もらうよ。

ス:あぁん??!

  ち・・・っ! まあ・・・しゃあねエな・・・お前さんがそこまで言うんなら、そっちがホントだろ・・・邪魔したよ。

 

 

〔そして、ここでその盗賊、売り下げをあきらめ、品物総てを持ち去ろうとしたのです。

すると・・・?〕

 

 

ナ:・・・・・ちょいと待ちな。

ス:ああ?もう用はすんだんだろ??

 

ナ:やっぱ、そのロザリオだけは置いてきな。

ス:な・・・なんで・・・

 

ナ:こっちで処分させてもらうんだよ。

  あんたの、今のその表情(ツラ)見てると、あたしんとこ以外で捌(さば)こうとしたろ・・・

  同業者には、泣き見させたくないんでね。

 

 

ス:チッ―――! ・・・・ほらよ!

ナ:・・・。

  あんまし、あくどい事考えんじゃあないよ!!

 

ス:(ケッ!お互い様だろが・・・!!)

 

 

〔・・・・どうやら鑑定士、性質(たち)の悪い粗悪品と判断しておいた姫のロザリオを、自分のところで処分する名目で、盗賊から引き上げた模様です。

 

ですが・・・本当のところは、どうなのでしょうか・・・?!〕

 

 

ナ:・・・・・・・。

  (・・・・・間違いない、こいつは先立って滅亡したはずのテラ国の紋章。

  それに、こんな精巧な造りは・・・恐らくその中でも特に限られた・・・そう、王族のものだろう。

 

  それを、どうしてあいつなんかが持っているのか、気にはなるが・・・・。

  ひょっとすると、兼ねてより噂のある、生き残りのもんのなんじゃあ・・・?)

 

  フフン・・・まあいづれにしても、こんな恰好の好餌(えさ)を見逃す手はない・・・・

  早速にでも、ここの―――ギルドの頭領の処にでも、持っていった方がいいかもしれないねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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