≪四節;仕合いの行方≫
兵:お―――おい・・・な、なんだかんだ言って―――
兵:ああ・・・もう百合近く打ち合ってるぜ・・・
兵:お、オレ達でさえ、将軍のお相手するのは、遠慮してるっていうのに・・・
兵:それをあの女は―――・・・一体何者なんだ??
ア:<こっ・・・これは?!!>
女:<ほら、だから言っただろう? 何もアヱカが心配する必要もないんだよ。
(それにしても、あのヒとか言う者・・・ただの大酒飲みではなかったようだな―――、あのキリエと互角に渡り合えているとは・・・
まァ、あの子も、ほんの少しばかり、手加減しているようだけど・・・)>
〔激しきは―――闘将と猛将のぶつかり合い、一合毎にその撃は、激しさ―――鋭さ、共に増し・・・
ヒも、ましてやキリエも、その切っ先が、お互いの顔を幾度となく掠めたのです。
ですが―――この仕合いの行方も、ほんの少しの・・・・些細な出来事から、決着を見ることとなったのです。
それは・・・この仕合いの開始から、小一時間が過ぎようとした頃――――〕
ヒ:へへへっ――――ンなら・・・・これならどうだあっ―――!!
キ:何のっ――――!!
☆〜―― ガキィィ――――ン ――〜☆
キラ――ン☆
キ:(ぅんっ?! なに・・・?)(チラっ)
ヒ:(ギラッ!)スキ・・・ありいぃっ――――!
ドスゥン―――!
キ:あうっ――!
ヒ:へっ―――どうしたってンだい・・・らしくもねェじゃあねえか。
仕合っている最中に余所見なんざ、トウシロのするこったぜ。
〔そう・・・そこには、何かに気を取られ、一瞬――― ほんの一瞬、そちらのほうに気が行ってしまい、
無様にも、地べたに伏せさせられ、眼前に二又蛇矛の『双顎』を突きつけられてしまったキリエが・・・。
それにより、誰しもの眼にも、ヒの勝利は確実のものと映ってしまったのですが・・・
なんと、このとき――――キリエが意外な行動に出たのです。〕
ヒ:中々・・・・愉しかったが、幕引きは案外つまらなくなっちまったな。
キ:――――・・・。(ジロリ)
ヒ:だが―――・・・ここにいる他のヤツ等より筋がいい。
何なら、オレの副将として、置いてやっても構わねェぜ。
そこンとこ、よく考えるんだ―――(クル)な・・・
キ:――――!!(キッ!)
〜 ど・ んッ! 〜
ヒ:(グラッ)あ・・・・?!な、なにしやがる、おめ――――ぇ・・・
――カシュッ――
ヒ:ン・な―――(お、オレの短刀を・・・・?)
キ:たあぁ――――ッ!(ピュッ―――)
ド・ガッ
誰:ぐ・ぅ・・・
・
・
・
ドサ
ヒ:な・・・・にぃ?!
〔それは、自分に背を向けたヒに、体当たりをし、ついでに彼の腰に佩いていた短刀を奪い、
それを―――あらぬ方向―――、この陣全体が見渡せる立木に向かって投げた―――・・・すると、そこからは“何か”が落ちてきたのです。
でも、それは紛れもなく―――・・・〕
キ:・・・誰か!今あそこに落ちてきたモノを、至急調べて下さい!
兵:は・・・はいっ!
・・・・あっ―――!
ヒ:どうした?!
兵:こっ・・・・これは―――― これは人です!
人が木から落ちてきた模様で―――・・・でも、どうして??
ヒ:ナニ?!人だと?? どこのどいつだ―――
兵:さぁ・・・そこまでは―――分かりません。
キ:・・・・この国の者ではないことは確かね。
ヒ:ナゼそんなことが言える。
キ:自分たちを護ってくれる兵士達を、弓で狙うという民もあったものではないわ―――
ヒ:なに?弓を??
キ:ところで――― その者は息があるの?
兵:えっ? いえ・・・喉元に刃が刺さって―――死んでおりますが。
キ:(ふう・・・)そう―――
ヒ:なんだと―――?? それは本当か?
兵:ええ―――、御覧の通りです。
ヒ:うぅ―――ッ・・・
(こ・・・この女―――、オレとヤり合っていただけでなく、こんな事まで・・・なんて―――考えられねェぜ)
〔それは、人―――人間だったのですが、その者は、この練兵場にいる誰かを狙っていた形跡があり、
この者の凶弾に、誰かが斃れる前に、キリエが見つけ―――仕留めた・・・と、いうところのようです。〕