≪二節;姦計――――??≫
〔一方その頃――― 侍中のセキは、あの使者が言っていた通り、自分の属する“忠臣”の旗頭的存在の、
尚書令・イクの部屋まで来ていたのです。
しかし―――ここで、盟主の意外な発言を聞くことになろうとは・・・〕
セ:お呼びにより参上しました―――・・・
イ:おお・・・セキか、いやすまなんだな―――
セ:いえ、別に・・・。
ところで―――イク様、私をお呼びになった用件とは・・・?
イ:うむ―――・・・いや、実はそのことなのだがな。
以前から申し立てていた昇進の件が、急に通ったのだ。
そのことで、お前にも係わり合いがあるのでな、引き戻らせたのだ。
セ:な―――なんと・・・昇進??
イ:うむ、お前はこれより、録尚書事となる。
セ:え――― ろ、録尚書事・・・・?? で、ではあなた様は??
イ:うん?ワシか? ワシはな、それに伴い司徒になった。
これで、あの連中に好き勝手はさせまいぞ。
セ:あ―――・・・ああ・・・なんという・・・
イク様、あなた様はあやつらに一杯喰わせた―――と、お思いでしょうが・・・
その実、喰わされたのは我等の―――イク様の方ですぞ??!
イ:な―――なんだと??
どうしてそのような・・・
セ:考えても見てください、どうしてこのような時期に、昇進する必要性があるのでございますか・・・
イ:う―――・・・うぅむ・・・た、確かに、ワシもそのことはおかしいとは思っていたのだが・・・
セ:ともかく――― 私はこの件に関しては乗りかねます。
イク様も、そこのところをどうか―――・・・
〔この時期に、なんら勲功を立てたわけではないのに・・・しかも、以前にも朝議に具申されながらも、却下され続けていたのに・・・
なぜか、自分たちは昇進する事になっていたのです。
それでは、そのことが示すこと―――とは・・・?
それはそれとして、“忠臣”の筆頭でもあるイクを諫めたセキは、
このあと・・・監査・観察のため、同じくしてウェオブリへと来ている、ガク州公アヱカに会っていたのです。
そう―――今までにあった事の顛末を話し、意見を聞くために・・・〕
ア:セキ殿―――、私に用がおあり・・・とか。
セ:はい―――・・・。
実は・・・我等が一派の筆頭でもあるイクが、ボウ率いる佞臣の一派に、一杯喰わされまして・・・
ア:なんと―――イク殿が??
セ:はい・・・それが、以前より私たちが申し立てていた昇進の件を、この期に及んで、急にすんなりと通してくれたのです。
ア:この・・・大変な時期に??
セ:・・・そうなのです―――
〔この―――事の顛末を聞くに及び、アヱカは・・・いや、女禍様は落胆せざるを得ませんでした。
なぜならば、官位の昇進・・・と、言ってしまえば聞こえはいいのですが、
それは紛れもなく『官位での買収工作』に他ならなかったからなのです。〕
ア:ああ――――なんという事だ!! 私ばかりでなく、樹の幹の大切なところまで・・・蝕まれようとしていたとは―――!!
セ:は―――??!
ちょ・・・ちょっとお待ちください。
アヱカ様、今・・・あなた様は、『私ばかりでなく・・・』と、申されたのですか?
ア:ああ・・・おそらくは、あの使者と佞臣の一派とは、裏でつながっていたのだろう・・・。
セキ殿と私を離した上で、あの使者は、この私に賂(まいな)いの催促をしてきたんだ・・・。
セ:なっ―――なんですと?!!
ア:民達が・・・折角“血”と“泪”と“汗”で作り上げてくれたものを―――・・・
それを・・・そんな苦労何一つ知りもしない者が、無償で強請(ねだ)ってくるなんて最低だ!!
しかも・・・剰(あまつさ)えに、上の方でも官位での買収が行われているなんて・・・・
一体ショウ王は何をなされているのですか??!
セ:―――――・・・・。
ア:セキ殿??!
〔このとき・・・セキは返事が出来ませんでした・・・。
いえ、正確には、返事のしようがなかったのです。
それというのも、使者からの賄賂の催促はともかくとしても、自分たち二人の昇進の件は、王からの下命だったのですから・・・。
そう・・・つまりは、ショウ王自らが、そのことを強く望んだことでもあった――――・・・
だから、セキは返事をするのに戸惑ってしまったのです。
そして、今からでは叶わないと思いながらも、アヱカも諫める手助けをしようと、今回の事の詳細を聞くようなのですが・・・・〕
ア:ところで――――・・・今回、一体どなたと、どなたが官位の買収を受けたのですか・・・
セ:・・・はぁ―――、私とイク・・・それと一派の者、諸々が・・・です。
ア:(えっ・・・?)なんと―――すると・・・では、イク殿が率いる一派が―――・・・?
セ:はい・・・それが、軒並みに高く引き上がっておりまして・・・
斯く言う私などは、この度録尚書事に収まる次第で・・・
ア:ええっ?!ろ・・・録尚書事・・・?? そんな高官に―――・・・?
セ:はい・・・。
ア:ちょっ――――と・・・すみませんが、その他の人事をお教え願えないだろうか?
セ:はぁ? あの・・・アヱカ―――様?
ア:お願いです・・・。